久美子の勤務する博物館は図書館と隣接されている。久美子の勤務終了時間まで3人は博物館と図書館で過ごすことになっていた。2年前にリニューアルされた博物館の目玉は巨大スクリーンに遠〇地方に伝わる民話とアニメで上映しているコーナーで、最大100人を収容出来るようにベンチが5列に並んでおり、階段状の最後尾が一番高くなっている。この日は60%が埋まっていた。
「たっくん、去年より背が伸びてカッコよくなったね」上映が始まると周辺が暗くなる。貴美が辰徳の耳元で囁いた。前の席に美智子が座っていて、なおかつ柱の陰で、小学生の二人はほとんどの人々からは死角に座っていた。
久美子は館長として提示の見回りを行っていた。上映コーナーに差し掛かっり、出口の方向から客席を見渡した。ほとんどの客がスクリーンにくぎ付けになっていたが、最後尾の小さな二人がスクリーンを見ていない。二人はお互いを見つめ合っているのだ。辰徳と貴美だった。やがて客がスクリーンの内容に引き込まれるかのような感嘆の声を上げた時、少女の顔が少年の顔に近づいた。二人の口唇が重なった。
久美子は眩暈がして館長室に戻った。小学生同士のキスシーンを見かけただけだと自分に言い聞かせる。だが、体中の血液が逆流しているような錯覚に襲われ、天井や壁がぐるぐる回っている。嫉妬…、小学生同士の戯れのキスに激しく嫉妬している自分を久美子は恥じた。だが、辰徳への想いが、あの日の貴教への想いに重なっていた。
「いけない、何度同じ過ちを繰り返すの…」久美子はつぶやき自分を戒めた…
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