突然の暴発、それは客観的かつ外的な要因・・彼の海外転勤だ。
ら、来月・・から・・?
・・その国、聞いたことない・・何処?
・・通貨・・は?物価・・は?
・・宗教とか・・治安とか・・
名物っつーか何が美味しい・・の?
奥さんと子供も・・連れていく・・?
あたしは連れて行くわけ・・無いよ、ね。
混乱していた。
混乱のあまり質問が支離滅裂だ。
動転していた。
動転のあまり泣くことすら出来ない。
心臓がバクバクと鳴る。
呼吸すらままならない。
視野が真っ暗だ。
あたしの肩を誰かが揺する。
「おい、おい!おい、大丈夫か?」
大丈夫じゃねー。
え?
あ、夢?
彼の心配そうな顔が眼の前にあった。
良かった・・夢だ。
汗、びっしょり・・だ。
「びっくりした・・。」
いきなり、うなされて唸り出したらしい。
なんだぁ。
夢オチかよ・・。
いやいや、お騒がせしました。
あたしは照れ笑いを浮かべながら、心配そうな彼に夢の内容を説明する。
「今・・ね、夢で・・ね・・」
話していくうちに彼の顔が強張る。
同時にあたしの頬もだ。
違う・・。
・・夢じゃ・・ない。
いや、今は夢だけど・・
・・これは約束された未来だ・・。
いつかは弾の出るロシアンルーレット。
いつかは現実のものとなる予知夢だ。
ぐぶっ、ぶびゅっ、ひぎっ・・・
あたしは泣き出していた。
これ以上ない程、汚い泣き方で泣く。
涙が、鼻水が止まらない。
嗚咽で咽喉が張り裂けそうだ。
悲しくて胸が張り裂けそうだ。
「・・ごべんだざいぃ・・。」
『ごめんなさい。』って言ったつもり。
だが自分でも伝わるわけがないと思う程のカツレツの悪さ、発音の仕方。
しかも枕に顔を押し付けてるもんだから、声はくぐもっていた。
夜中に起こしてゴメンナサイ。
面倒臭い女でゴメンナサイ。
枕を汚してゴメンナサイ。
あの日、あんなこと頼んでゴメンナサイ。
今日まで居座ってゴメンナサイ。
あたしは、よくぞと思う程、細かな項目に渡って謝り続ける。
まるで後ろめたく感じていた全てを吐き出すかのように。
彼はあたしの背中と頭を撫で続ける。
それでも、この世の全てに始まりと終わりはある。
ようやく泣き止んだあたしに向かって彼が呟いた。
「大丈夫。」
きっぱりと言い放つ彼。
「だじが?」
『何が?』って言ったつもりだった。
正確には『何が大丈夫なの?』って言いたかった。
彼は黙ってボックスのティッシュペーパーを差し出す。
肩を震わせながら受け取るあたし。
しょうがねーだろ・・。
・・鼻水で息も出来ねーよ・・。
呆れる・・よ、な・・。
・・嫌いになれば・・いいじゃん・・。
・・放り出してくれよ・・。
二回に分けて大量の鼻水を処理したあたしは、彼に向かって問い掛ける。
「・・大丈夫って・・何・・が?」
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