あの日以来、あたしは平均して月に二回くらい彼の家を訪問していた。
ひとつしかない布団に包まって乳繰り合う二人。
まるでラブラブなカップルだったが、そこは不倫なので普通じゃない点が何点かあった。
あたしは私物を彼の部屋に残さなかった。
彼も布団を増やそうとはしない。
あたしが彼の部屋に出入りしている痕跡を残さないように。
互いに触れない暗黙のルール。
だって・・・不倫だもん・・・。
お互い、いや、あたしに捨てるモノは無いけれど、彼の家庭やキャリアに傷を付けるわけにはいかない。
それに・・いつまでも続くはずはなかった。
いつかは終わりが来る関係。
だから、なのだろうか?
だから彼とのエッチは燃えるのか?
他の人との経験が無いから何とも比較しようがないのだけれど。
だって最低でも三時間近く、場合によっては五時間近くかけて互いの躯を愛し合うんです・・・よ。
つーか、貪ると言っても過言ではない。
初めての時は何も分からず、彼にされるがままだったけど、色々と教えて貰いながら着々とスキルアップを果たし、経験値を増やしていくあたし。
え?
具体的にはどんな?
それ・・セクハラっすよ・・。
言えません・・。
・・でも、言いたい。
ちょっとだけ・・ですよ・・。
・・誰にも言っちゃダメ・・だから、ね。
彼はあたしの躯を舐める、、というか唇と舌で愛撫してくれる。
文字通り全身だ。
しかも丹念に、だ。
まるで母猫が仔猫を舐めて毛繕いしてあげているみたい。
意外な箇所が意外に気持ちいいことを教えてくれる彼。
彼は丹念に唇で触れながら、あたしの弱点を探究しては刺激を加えるのだ。
ん?
例えば?
えっと・・膝の裏側、その柔らかい部分ってあるじゃないですか。
あそこにキスされたり舐められると気が狂いそうになるんだよね。
でも激烈な快感っていうのとも違くて。
快感に対する感度が良くなるっていうか。
後は・・足の指・・とか。
足の指、それから指と指の間の膜みたいな部分って分かります?
ここ舐められたら堪らんですよ。
くすぐったいんだけど、それだけじゃない。
だいたいの場合、あたしは俯伏せにされてソレをされる。
往々にして枕に顔を埋めているから、行為が始まる迄は何をされるのかが分からない。
視覚情報が制限されていると皮膚感覚が敏感になるのだそうだ。
それらを彼は『前戯の前の前戯』と称していた。
性器への挿入行為、、いわゆるセックスにおいてクライマックスに至る前に性器のアイドリングを済ます為の愛撫が『前戯』だとしよう。
だから『前戯の前の前戯』だって。
「それは一般的なモノなんですか?」
「んにゃ。俺が密かに提唱してるだけ。」
げらげらげら・・・
何だよ、それ。
でもドンピシャだった。
少なくともあたしにとっては、だ。
恥ずかしながら『前戯の前の前戯』だけでも軽く果ててしまうのだ。
そんな丹念な愛撫をじっくりと時間を掛けてされたあたしの躯は、どんどんとエロくなっていく。
そんなある日、あたしは彼に質問を投げ掛ける。
今までに何人くらいとエッチしたの?
にやり
彼は片頬だけで笑うとあたしの頭を撫でる、というか髪の毛をグシャグシャに掻き回す。
ぐわー。
何すんだよー。
くつくつと笑いながら彼の唇があたしの唇を塞いできた。
温かく湿った肉の塊が口の中を舐め回す。
くたり。
あたしは躯から力が抜ける。
いきなりメロメロにされた。
もう・・。ずるい、よ・・・。
・・・ちっくしょー。
こいつ、どんだけ遊んできたんだー。
・・あたしのことも・・
・・『遊び』・・なんだけど・・ね。
ちょっと切ない・・・・。
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