あたし達は高台にある小さな公園でハンバーガーを食べた。
うむ・・。
苦しゅうない。
良きに計らい給え。
何つっても『姫』だからな。
即席、かつワンタイムだけど。
浮き立つような気分で食べた何の変哲も無いモーニングセットのハンバーガー。
あたしは、あの日のあの味を一生、忘れない。
「さて、と。」
食事を済ませた彼はゴミをまとめ始める。
お別れの時間だ。
切ないな。
二人で駐車場まで歩いている時だった。
「大丈夫?痛くない?」
唐突に問い掛けてきた彼。
主語は省略されていたが、趣旨は理解できる。
・・・ちょ、ちょっとだけ・・
でも・・今、ここで聞くかぁ・・?
ぐびり
あたしは立ち止まってツバを呑む。
ドキドキしていた。
朝の公園、辺りに人影は無い。
女は度胸、だ。
怪訝そうな顔をして振り返る彼。
「ちょっとだけ・・痛い、かも。」
そう言いながら、あたしは立ち止まって眼を瞑る。
やや顔を上向きにしてみた。
・・分かるでしょ・・。
・・分かってよ・・。
・・分かってくれ・・。
・・っていうか分かれよ、この野郎・・。
永遠にも等しい時間の中、あたしは人生最大の賭けに出る。
この賭けに勝てたら残りの人生、負けっぱなしでも良かった。
長いような短いような時間が過ぎていく。
・・負けた、か・・。
と、その時、あたしの頬に彼の手が添えられる。
不器用に、、、でも、そっと優しく触れていた。
ちょん
額に何かが触れた。
一瞬だけ触れた箇所、その少し上に彼の吐息が当たる。
彼の顔が遠ざかる気配がした。
あたしは瞑っていた眼を開ける。
困ったような表情を浮かべた彼の顔。
・・勝った・・のか?
少なくとも負けてはいない・・だろう。
・・引き分け、でもない。
六四で勝ち、としておこう。
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