『足ピン』だったらしい。
・・え?
・・いえ、その・・
・・あたしが・・イッた時の格好・・です。
左右の脚を真っ直ぐに伸ばし、その先端にある爪先を鉤爪のように曲げたあたしは、弓なりに反らした躯を小刻みに震えさせながらイッた・・らしい。
後日、笑いながら彼は教えてくれたが、それが幸せだった頃の記憶のひとつ。
いずれにせよ絶頂の余韻が収まるまでの間、そして収まってから。
その間、彼はずっとあたしの躯を撫でてくれていた。
敏感な部位ではない。
むしろ、肩とか背中とか、頭とか。
だが、イッた直後、皮膚感覚が敏感になっていたのであろうか、なかなか余韻が収まらない。
まるで余熱を保ち続ける埋み火のように。
それでも絶頂の余韻が去って、落ち着きを取り戻したあたし。
ようやく呼吸も整ってきた、と思いきや彼はあたしの躯を裏返す。
今度は俯伏せにされていた。
焼き魚じゃないんだから、、そう思った瞬間、彼は暴挙に出る。
あたしは浴衣を剥ぎ取られる。
つまり俯伏せのまま、全裸にされたのだ。
ごそごそ
衣摺れの音。
彼も浴衣を脱いでいる、、らしい。
薄暗いラブホの一室で全裸になった男女。
ひぃぃぃ・・。
あたし・・ホントに・・ヤられちゃう。
・・あたしから・・言ったんだけど。
次の瞬間、彼の躯があたしの背中に覆い被さってきた。
見なくても分かる。
・・真っ裸・・ですね・・。
・・あたしも・・だから・・
・・全裸の男女が・・。
アワアワしていた。
パニックに陥るあたし。
だが意に介さぬかのように、あたしの項、髪の生え際に触れた彼の手が髪の毛を掻き分ける。
と、項から首筋にかけて温かく湿った柔らかなモノが這い始めた。
首筋から肩、肩から肩甲骨、肩甲骨から背骨まで至った舌が背骨に沿って這っていく。
しかも・・時々、停まっては、そこにキスをされるのだ。
・・ご、極楽・・だ。
・・ヤバいっす・・。
ゆっくりとした動きが尾槌骨の辺りで不意に停まると、彼の手が不意にお尻の肉を鷲掴みにする。
右手で右側の、左手で左のお肉が掴まれた。
・・手に・・余ります・・よね・・。
・・て、え?
何と彼の舌と唇が、コトもあろうか、お尻の割れ目を這い始めたのだ。
しかもお尻の肉は左右に広げられている、、ということは、ですよ。
あたしのお尻の穴なんかも丸見え、、ってことですよね。
「あ。嫌、き、汚ない・・。」
「え?何が?」
事も無げに呟いた彼の顔の位置は変わらず、その舌だけが蠢いている。
『嫌だったら言ってね。』って言ったじゃないかぁ。
・・ホントは全然、嫌じゃない。
でも、申し訳ないよ・・
・・そんなトコロ、舐めたりキスしたり・・。
「だ、だって・・そこ、お尻・・。」
言葉に詰まるあたし。
肛門・・・ですよ。
排泄するところですよ。
誰にも見せたこと無いんですよ。
超恥ずかしい。
「だってシャワー浴びたでしょ?」
「・・・は・・い・・。でも。」
「だったら全然、汚なくないよ。」
ぶわっ・・
俯伏せで良かった。
泣き顔を見られたくない。
あたしは大量の涙を流していた。
何故かは分からない。
ただ『ぶわっ』としか表現出来ない、、そんな涙が止まらなかったんですよね・・。
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