あたしは愕然としていた。
濡れたことはない。
少なくとも覚えている限りでは。
それはオナニーをしていても、だ。
思春期を迎えた頃から、下腹部がムズムズするような感覚に悩まされたこともある。
人並みに興味はあった。
自分で触ることにより、快感を得ることが出来ることも知っている。
だが性器が濡れた経験は無い。
せいぜいが湿るくらい。
汗かなぁ・・程度。
「・・嘘・・。」
彼に、というよりは自分自身に発した言葉。
ひょっとしたら巧くコトが運ぶかもしれない、そう思うと新たな不安が頭をもたげる。
破瓜の痛みに対する恐怖。
「ちょっとだけ・・いい?」
「?」
不意に彼は覆い被さったあたしの躯、その位置を調整する。
結果、あたしはホウキに跨った魔法使いのような体勢にされていた。
あたしが魔法使いで彼がホウキ。
そのままの態勢で再び抱き締められた。
あ。
下腹部の一点、敏感な肉の芽から甘い感覚が広がっていく。
覚えのある感覚。
思春期の頃、意図せず机やクッションに股間を押し付けてしまった際、不意に生じる奇妙にして好ましい感覚。
それが再現されていた。
あ、もっと・・。
あたしは思わず躯の重心をズラして更なる圧迫を加えていく。
きゅんっ・・きゅんっ・・・
そんなあたしを余所に彼の両手は再び蠢き始める。
下腹部から広がる甘い痺れと優しく撫で回される皮膚感覚。
躯の芯が何か熱いモノに満たされていくのが分かる。
満たされた瞬間、あたしは未知の感覚に対する本能的な恐怖に襲われる。
「あ。だめ、いや・・。」
そう言いながら上半身を浮かせて逃げようとした瞬間、あたしは彼に引き戻されるようにして抱き締められる。
それだけではない。
抱き締めながら、彼はあたしのお尻を抱え込むようにした。
「!」
・・腰が砕けるかと・・思いましたよ・・。
サワサワされながらクリトリスを圧迫されたあたしは、まるで木に止まったセミのような姿勢で躯を震わせていた。
経験したことも無いような甘い痺れが全身を満たす。
一分?五分?十分?
ようやく躯の震えが収まりかけた頃、不意に彼が口を開く。
「自分でする時もさ・・」
濡れやすいヒトなの?
イキやすいヒトなの?
「・・・・濡れ難いし・・・・イッたこと・・ないです。」
クスクスと笑う彼。
・・何だよ・・何が可笑しいって・・あ・・。
誘導尋問に嵌められてしまった。
自ら口にしてしまった自慰行為に耽る事実、そして感じ難く濡れ難い体質。
・・はしたない女だって・・
・・思われるだろうな・・。
あたしは打ち拉がれていた。
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