結局、姫乃樹さんの提案で私たちは場所を代えいることになった。
「田川課長、行きましょう」姫乃樹さんが俺の腕を取った
「ちょっと、姫乃樹さん」反対側に村松さんが近寄ってきた。俺たちは三人並ぶようにして来た道を戻り駐車場に向かった。
「姫乃樹さん、よくこの公園に来るの?」間が持たず私は聞いた
「普段の週末は図書館とかが多いです」
「へえ、私と同じだ」
「ストーカーじゃん」村松さんが少しふてくされて言った。腕こそは組んでいないが身体が触れそうな距離で歩いている。
「違うわよ、JK、わたしと課長は読書が趣味なんです~」
「やることないだけじゃないの~」
「もう、失礼ね~」頬を膨らます姫乃樹さんが意外と可愛かった
「怒った顔、可愛いね」私は思わず口に出していた
「そんな、やだ、急に、課長ったら、可愛いだなんて、いやん、恥ずかしい」姫乃樹さんは足を止め身体をくねらせている
「出た、必殺ヴァージンキラー、可愛いね!」女子高生の言語はなかなか理解しにくい
飛行機広場に戻った
「あら、若い奥さんいるじゃないの~」遠くでわざと聞こえるようにさっきのおばちゃんたちが話をしている
「もしかして、わたしのことかしら~、わたし課長の奥さんに見えるみたいですね」楽しそうな姫乃樹さんを見ているとこちらも楽しくなってしまう。
「ヴァージンの妄想、ヤバすぎ!」
「ちょっと、JK、さっきから聞いてれ憎まれ口ばっかりたたいて~」
「あたしはきょうこです~、アメリカ大統領かよ!」
「JFKかな、うまいね、きょうこちゃん」
「さすがパパはものわかりがいい」村松さんも腕を絡めてきた
「課長はわたしみたいな、おとなしくてチョイポチャな女子が好きなの~」私の好みを知っているとは…
「それは奥さんで充分、たまにはあたしみたいにスレンダーで可愛い子とも遊びたくなるんです~」駐車場について二人はにらみ合った
「きょうこ、乗りなよ、あんた課長の車に乗ったらなにするかわかんないから」
「しませんよ~、あたしはパパにいろいろ相談があるだけなんです~」
「まあまあ、ふたりとも、とりあえず場所を移そうか」姫乃樹さんが予約してくれた、個室のファミレスに向かうことになっていた。先に姫乃樹さんの車が走り出だした。次に私が車を出した。姫乃樹さんの車は私の車の3台横に止まっていた。姫乃樹さんは我が社の軽の新車を乗っていた。ナンバーは10-03、私の誕生日かな…、そんなはずないよな。
10分で個室のファミレスについた。G県発祥でS県にも多くの店舗をかまえる、老若男女問わず人気の店だ。すでに数組待っていたが、姫乃樹さんが予約していることを告げるとすぐに個室に通された。メニューが5冊ほどあり、注文はタッチパネル、料理は障子を開け閉めして店員が渡してくれる。完全な個室感がヤングファミリーに絶大な人気なのだ。
掘りごたつ式のテーブルで私の横に姫乃樹さん、正面に村松さんが座った
「もう、きょうこったら、公園で田川課長といちゃついたら、課長が条例違反で逮捕されちゃうんだからね~」メニューを選ぶのをそっちのけで姫乃樹さんが頬を膨らませ、力説した。
「はいはい、ストーカー姉さん」村松さんはメニューから目を離さずに応えた
「ふたりともさっきから平行線だね、でも確かに通報されてたかもね」私は姫乃樹さんに感謝の眼差しを向けた
「課長~、嬉しい、こんな近くで見つめてくれるなんて」姫乃樹さんは目を潤ませた
「姉さん、あんた絶対ヴァージンだよね。そんなんじゃ男は引くよ」村松さんは年上のチョイポチャ女性を睨みつけた
「そ、そんなことないも~ん」姫乃樹さんはおとなしくなった
「注文するね」村松さんはタッチパネルを操作しはじめた
「課長、何にしますか」姫乃樹さんの声のトーンがダウンしていた
「そうだね、アイスコーヒーで」
「じゃあ、わたしは、アイスティーとパンケーキで」
飲み物とパンケーキとショートケーキが運ばれてきた。私たちは姫乃樹さんの乾杯の音頭でグラスを合わせた
「そうだ、村松さんの相談って何なの」私は切り出した
「まさと君、最近エッチしてくれないんです」
「ぶー」姫乃樹さんが勢いよく飲みかけのアイスティーを吹き出し、私もアイスコーヒーを喉に詰まらせむせた。
「ちょっと、まって、二人はすでにそういう関係でなの」姫乃樹さんが聞き返した
「そうです。あたしは3人目だったけど、まさと君は初めてだったみたいで、すごく可愛かった」恋する乙女のように目の前の少女は
赤裸々な体験を話し始めた。姫乃樹さんは頭から湯気が出そうなほ顔を赤らめている
「で、その、いつぐらいから、その、まさとは君とその、行為をしなくなったのかな?」私は言葉を選んで尋ねた。
「一か月前からです、それまでは週3回くらいしてたのに」
「週3回~」姫乃樹さんの思考回路がマヒしていた。案外この子は本当にヴァージンなのかもしれないと思った。
「あたし、こっそりまさと君の家の庭にしのびこんで様子をうかがったんです」
「そうなの、あまり危険なことはしないほうがいいかな」私はアイスコーヒーを一口飲んだ。姫乃樹さんはパンケーキをフォークで何度も突き刺している。
「それで、わかったんです。まさと君を惑わしている女の正体が!」少女は真っすぐに私の目を見つめて口を開いた…
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