「はじめまして、村松きょうこです」少女は軽くお辞儀をして微笑んだ。その笑顔はまさに天使よようだ。
「まさとの父の田川敬之です」私は周囲をうかがった。家族づれの多いこの公園で私は注目の的だった。彼らの目には私が今からこの女子高生をどうにかするに違いない、としか映っていないのだろう。
「少し歩きませんか、紫外線が気になるので」少女は軽く首を傾けて提案した。微笑みは絶やさない。
「そうだね、暑くなりそうだし」私は冷や汗をかいていた。中年男性が女子高生と会話をするとき、誰もがそうなるのではと思えてきた。
「それじゃ、向こうへ行きましょうか」少女はさりげなく私の腕を取り、歩き出した。周囲の視線と、無言の圧力で私は押しつぶされそうだった。
「あのう、村松さん、腕は離してもらっていいかな」
「どうして~」小zyは無邪気に私を見上げた
「あの、ほら、世間に誤解をまねきかねないから」
「でも、きょうこパパとは手をつないだり、腕組んだりするよ~、きょうこのパパふたりいるの」数人に会話を聞かれてしまったようだ。さらに強い視線が突き刺さる
「いやね~、通報しようかしら」おばちゃんんがわざと聞こえるように会話をしていた
「村松さん、すこし急ごう」私は足早にその場を離れた
草木が生い茂ったエリアは日差しが柔らかかった。
「まさと君のお父さん、のりゆきって言うんですか?」少女はさらに身体を密着させていた
「そうだよ」明らかに後ろをつけられてい気がしてならない
「きょうこのパパ、ふたりとものりゆきなんですよ」
「村松さん、そのパパの話はとりあえずおいといて、相談事って何かな」
「ちょっとよろしいですか」背後から女性の声がした。もしかしたら婦人警官なのか。私は恐る恐る振り返った
「はい」その女性はグレー、胸元が大きく開いたロングTシャツを着ていた。不謹慎にもその胸元の谷間に最初に目が行ってしまった。ゆっくりと視線を顔に向けると、その女性は微笑んでいた
「田川課長、こんにちは、お散歩ですか」柔らかな口調のその声には聴き覚えがあった
「おばさん、パパとどんな関係ですか」可愛い天使が言った
「こら~、おばさんじゃないでしょ、お・ね・え・さ・ん!」ショートヘアーで少し丸顔の可愛い顔の女性・・・?
「田川課長、わたしですよ~、姫乃樹舞香です」
「えっ?」同じ課の丸い大きな黒縁メガネで入社10年目のあの姫乃樹さん?
「休みの日はコンタクトなんです」
「そうだったのか、素敵な女性だななんて思ったんだけど、その姫乃樹さんだったとは」
「素敵だなんて」丸顔のキュートな女性は顔を赤らめた
「おばさん、今大事な相談があるんだから、きょうことパパのじゃましないでよ~」天使は声を荒げた。数組のカップルが振り返った
「ちょっと、あなた来なさい」姫乃樹さんは村松さんの腕をつかみ、私から引きはがすと数メートル離れると、少女に何やら耳打ちした。
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