【藤原みゆき①】
藤原みゆきは小中学校が同じで、クラスも一緒になったことがある。中学生の頃、みゆきは男子生徒から結構人気があった。ショートヘアで目鼻立ちが良く運動もできる。可愛らしい笑顔に何人もの男子が告白し、その度に撃沈していた。あるとき学年でも上位カーストの男子と付き合いだしたという噂が流れると、告白する男子はいなくなり告白による撃沈報告もなくなっていた。中学卒業以来、俺はみゆきに連絡する間柄でもなかったが、同窓会で俺は久しぶりにみゆきと再開した。
大学を卒業した俺は社会人3年目となり、社会の荒波にもまれつつ、仕事に私生活・趣味と充実した生活を送っていた。彼女はおらず出会いを求めてアプリを使うも、これといって成果はなかった。そんなときにSNSで同窓会の話が回ってきた。なんでも小学校の同窓会らしく、担任だった先生もくるらしい。久しぶりに会いたい友人もいた俺は、すぐに出席の連絡をした。
同窓会当日。集まった面々は大人になっていたもののすぐに打ち解け、10数年ぶりの再開に盛り上がりを見せた。興奮が少し冷めた頃、俺はふと長髪の女性と目があった。向こうもこちらと目が合うとお互い誰だっけと、少し思い出す素振りをした。思い出すのが早かったのは俺の方だった。
「あっ、藤原さん??」
喧騒の中、小声で言った一言をみゆきは笑顔で頭を縦にふった。どうやら伝わったらしい。俺は席をたち彼女の真向かいの席へと座った。
「藤原さんだよね?髪伸びて雰囲気変わったから気づかなかったよ。」
「私も。一色くんさ、中学の頃太ってたから、その時のイメージで誰だかわからなかった(笑)」
「あー、良く言われる(笑)」
俺は中学生の頃、良く食べ、良く寝ていた。そのせいで背は伸びたもののブクブク太り、恋愛とは縁遠かった。
「仲が良い奴らだとすぐわかってもらえるんだけど、久しぶりに会うとめっちゃ驚かれるよ。」
「うん、私もちょっと驚いた。でもさ、藤原さんって、なんでさん付け?小学校の頃はみゆきって読んでたじゃん。」
「あー、なんかさ中学から俺、太り始めたじゃん。それで中学校が同じだった女子にだけは、いまだに臆病になるんだよね。みゆきは微妙なラインだけど」
「なにそれ(笑)」
9年間学校が一緒だった女性とは思えないほど、みゆきは美人になっていた。当時は可愛いかったが、今は美人という言葉が良く似合う。ショートヘアからロングヘアに代わり、幼顔は大人っぽいキリッとした表情になっている。大人美人となった彼女に内心ドキッとしながら、でも昔懐かしい話で盛り上がった。
「へぇー、今は看護師なんだ。みゆきのことだからOLとかしてると思ってた。」
「なんで笑」
「中学の頃さ、結構テキパキと委員会の活動とかしてたじゃん。そういう感じからOLかと。」
「確かにしてたけど、内申のためだったし、親がPTA役員だからやらないとうるさかったの。」
「そういやそうだったな。」
「そう。だから仕方なく、、、。ゆうたはなんでゲーム会社なの?」
雄大(ゆうた)は俺の下の名前。みゆきの下の名前で呼ぶクセが、幾人もの中学男子を撃沈へと向かわせた理由の一つである。幸い、みゆきと小学校から一緒だった俺は、それを免れた。
「まぁ、理工系だったし、プログラミングとかパソコンいじるの好きだったからかな。」
「そうなんだ。ゲームするのは好きだけど、そういうのはムズかしそう。」
「ゲームはやるのが一番だよ。深く考えたら負け。」
「ふふっ笑。そういうところ、変わってない。」
そんな感じで、俺とみゆきは少し長く話していた。そして店の時間がくると二次会に移すという話がでた。友人たちも乗り気だったが、次の日に仕事があった俺はそこで帰ることにした。
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