青く黒い経験 7
次の日、朝からずっと電話を待っていた、たぬ子でも根岸でも どっちでもいい、たぬ子の事が気になってしかたなかった。
夕方近くになって ようやく電話が鳴った たぬ子だった。
一言で言ってしまえば『バツが悪くて…』そんな事を言っていた。
明日は弟と何やら…、『宿題見てやれ』とかも親に言われてるらしい。
その次は土日、なので、『月曜日に行っていい?』、そんな電話だった、少しホッとした。
土曜日、父親は仕事 母親は昼で帰ってきた、母親と遅めの昼食をとると部屋に籠った。
暫くしてチャイムの音がした、
「根岸さんと綿貫さん…」、と母親が俺の部屋をノックした。
玄関には 赤ら顔のたぬ子と 困り顔の根岸が立っていた、「宿題、まだ終わってなくて、私達…」、赤い顔のたぬ子が言った。
部屋に入ってテーブルに宿題を広げた たぬ子が『フーッ』と、大きなため息をついて
「山根くんの顔みるより お母さんの顔みる方が ずっと恥ずかしかったぁ」と言っていた。
女心とは そんなもん なんなんだろぅか?。
「ちょっとぉ、(ドア)開けてぇ」
母親がそぅ言っている。
恥ずかしがっていた たぬ子がドアをあけた。
「はい、どぅぞ」
俺が ジュースとお菓子を受け取って 机の上に置いた。
「関心関心、頑張ってね」
テーブル一杯に宿題を広げてる俺達を見て 母親がそぅ言って出ていった。
とは言っても たぬ子は宿題のほとんどを終わらせていた、俺と根岸は それを丸写し していただけ なのだが。
「あえて親が居る時に2人で来たのは、『健全な関係』を印象づける為…」
たぬ子がそんな風な事を言った以外、『あの事』には 誰も触れられずにいた。
重い空気に支配され シャーペンの走る音が やけに大きく聞こえていた。
そんな状況でも最後には「…また月曜日ね…」、そぅ言ったのは意外にも根岸だった。
『根岸が…?』、根岸が言った事が凄く気になっていた。
両親と夕食を済ませ、部屋に籠って あれこれ思い悩んでいた。
ふと思いたって部屋を出た。
母 「どぅしたの?」
俺 「自販機、コーラ買ってくる」
母 「あら珍しい、コーラなんて」
俺 「ん?、うん、何だかね、行ってくる」
そぅ言って歩いて向かった。
目的はコーラなどでは無かった。
少し歩いた所に 個人商店の古びた薬屋さんが有る。飲み物の自販機の隣にもぅ1つ 小さな自販機が隠れる様に並んでいる。
今は見る事も無くなってしまったが、そう コンドームの自販機、それが目的だった。
『ガタッ』とコンドームの小さな箱が落ちてきた、俺は あたりを見回しながらポケットにしまった。
帰りは 大家さんの親戚がやってるという 畑の中の道を帰ってきた。
門脇さんちのプレハブが 段々と近づいてきた、今夜は珍しく灯りがついている。
畑の中から帰る時にはいつも門脇さんちの駐車場を抜けて帰る。今夜もそのつもりだった。
が、『ジャリッ』と1歩踏み入れて 慌てて戻ってしまった。
プレハブに横づけされた1ボックス、明るいうちは その車から段ボール箱を運び入れている所を何度か見かけた事があった。
しかし今夜は人影が有った、抱き合っている様な人影、門脇さんちのオバサンたった。
俺の『ジャリッ』に気付いたオバサンが 慌てて男の人から離れて
「あ、あら健ちゃん、今かえり?、お帰りぃ、買い物?」と、聞いてきた。
俺 「あっ、こんばんは、喉 乾いちゃって」
必死に『見てない』体を装った。
そして『…でね、…、…』
門脇さんちのオバサンが男の人に『さも仕事の話』を話しかけていた。
畑の中など 車は勿論 人さえも、この時間は通らない、きっと油断をしていたのだろう?。
そぅ言えば以前、門脇さんちの『噂』を両親がしていたのを偶然聞いた事が有った、その『噂』を思い返していた。
盗み聞きした『噂』と、越してきたばかりの頃の、両親の話しをまとめると、
《23で俺を産んだ母より4つか5つ年上のオバサン、そのオバサンより 更に一回り位上の旦那さん、きっとオバサンは40前半 旦那さんは50後半、新車で買った大型トラック それの返済を少しでも早くと 昼も夜もなく 長距離もいとわず旦那さんは頑張ってるらしい、『それを良いことに…』。『訳あり』らしく 籍を入れていない夫婦》そんな話しをしていたのを思い出していた。
『人影…』、ガキの俺でも だいたいの想像はついた。
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