あんなものを見せつけられてもいざ自分が撮影に挑むとなれば、嫌悪感がつき纏う。
本屋、新幹線、映画館、ライブ会場……場所を替えた幾つかの痴漢作品に出演する度に辟易した。
自分の性格的な問題、弁護士の肩書きが邪魔なのだ。
それでも女の身体を知り尽くした男に性器を刺激されたら……堪らなくなる。
作品は男を手で射精に導いて完結する。
こちらは望まなくてもその気にさせられてお預けなのだ、嫌でも毎回モヤモヤして切なくなってしまう……。
エステに通わされるようになった。リフレッシュになればとのことだが、本音は違うのだろう。
期待されても困る。
病院にも健康診断を兼ねて検査を受けるようにと言われている。この業界なのだから当然なのかもしれないが。
契約している病院があるという。これもこの業界ならではなのだろうか。どんな病院なのかと懸念したものの杞憂だった。中規模の病院だったが、一般の人達の姿が普通に見られたのだ。
予約が入れられていたのですんなりと部屋に通された。人間ドックのような大げさなことではなく当然、婦人系の検査が主な内容になる。
現れた医師は優しげな笑顔を浮かべた素敵な男性だった。法律を背負った世界の男性にはない吸い込まれそうなその印象に、きっと看護師達に人気があるに違いない。これからこの医師に身体を晒すなんて、この残酷過ぎる巡り合わせを恨んだ。
ブラウスのボタンを外して前を開く。
ブラジャーのホックを解くと看護師が後ろから支え持ってくれたので、丸見えになる。
表情が強張らないよう努めたつもりだけど、無表情になっていたかもしれない。
問診に加えて触診。それが終わると視界の隅に見えた特有の診察台に重い足取りで向った。
仕切りの衝立の陰でパンツを脱ぐ。聞こえないように溜息をついて、診察台に乗った。
左右に膝下を支える場所と足を置く小さな台が見える。意を決して用意が整ったたことを医師に告げると、間もなく身体を分断するような仕切りの為のカーテンが引かれた。
片方づつ足が台に置かれ、露わになっているであろう下半身が晒されてしまった。
早くなった心臓の鼓動を宥めながら問診に返答していく。
……今までに性感染症の経験はありますか?
ありません。
幾つかの問診に返答し、気になることはないかとの言葉に何度かクラミジアになったことを明かず。過度なストレスが続いたり、免疫力が下がると発症することがあるのだ。
冷たいですよ~、言葉の後に金属製の冷たい感触
が伝わる。分っていても冷たくて体に力が入る。
中は奇麗だとのこと。医師の質問に、あと1週間ほどで生理が来ると返答した。
今までにこういった検査の経験の有無を聞かれ、無いと返答。
また冷たいですよ~、言葉の直後に冷たい感触が触れた。
消毒だと聞かされたが、初めてだった。
大陰唇、小陰唇、丁寧に拭く、というより撫でるといった感覚を受ける。
医療用のゴムをはめた指がクパ~ァっと肉癖を開く。 空気に触れた粘膜が涼しくて、思わず羞恥心が噴き上がった。
指が上下になぞりながらの触診。丁寧過ぎるような……きっと気のせいだと自分に言い聞かせる。
陰核包皮に触れた。思わず……
先生、そこは意味があるんでしょうか?
違和感の他に、羞恥心の裏返しに皮肉めいたことを聞いてしまった。
気分を害すことなく冷静に説明をしてくれる医師に、逆らう言葉を失ってしまった。
どんな女性でも構造上、汚れが溜りますからね。
看過出来ない症例を発見することが無いことも無いですから、何でも早期発見が大事です。細かくても懸念材料を払拭していきましょうね。
デリケートな所なので申し訳ありませんが、奇麗に消毒していきますね、違和感があっても我慢ですよ。
丁寧に言葉を選んではいても、意味は理解出来た。
陰核包皮を捲られて冷たい物が塗りたぐられて、反射的に身体に力が入った。
それにしても丁寧にされているとはいっても粘膜なのだ、擦られても痛みを感じないのは何?
あぁそうか、滑りのある感じがするからだ。
でもそれじゃあ………マズイじゃない……
内心の懸念が当然のように的中する。
ヌゥ~リ…ヌゥ~リ…ヌゥ~リ………
埋もれるように成っていた肉芽が目覚めたように主張を始めだした。
痺れるような電流が脳まで走る。
さすがに止めてもらえるよう伝えたかったが、声を出せば言葉になる自身がない。
それどころか恥ずかしい声を聞かせたら耐えられない。
クリトリスの根本……カリ首を周回していたモノが露骨に本体を撫で始める。
端から真ん中、反対の端へと細かく繊細に触れては戻る、をくり返す。
身体が硬直し、細かな痙攣が顕著になる。
両手で口を必死に塞いだ。
ダメ…ダメ…ダメ…アッアッアッアッアッ…イヤッ…
仕切られたカーテンの向こうで激しく頭を振り、悶絶をする。
最高潮に膨張した己が逆鱗を誇示し、光沢を帯びて見事なまでに変化を遂げていた。
はい、結構です……それでは膣内を診させてくださいね~……触診していきますよ~……力を抜いてくださいね~
荒くなった息がまだ収まらない、頭が理解する間も追いつかないうちに指が挿入されていた。
せっ…先生、それは長くかかりますか?
カメラで診ることも出来ますが、それだと膣を拡げないとちゃんと確認できませんし、負担を考えると…こちらはそのほうが楽なんですけどね。
長く医師を続けていても、触診はしっかり診ないと判断出来ませんから。腸内カメラに比べたら楽ですから、リラックスしていてくださいね~。
丁寧な説明の最中にも360度、指の蠢きにされるがままに始まっていた。
何かを確認するように深く浅く、繊細に擦られていく。
一度は通り過ぎたお腹側に戻り、膣壁が撫で上げながら入口付近まで下がり、少し進んでは撫で上げる。
あっ~っそこは………
思ったが、どうにもならない。
甘く切ない感覚が身体に染み出していく。
挙がらうことが難しい感覚に溺れないように難儀して、耐えなければならない。
その感覚が色濃く強くなった。医師が中指に加えて人差し指も挿入したからだ。
せっ…先生?ちょっと…なんか…あのー
この辺が気になるので、もう少し診させてくださいね…痛いとか不快感はありませんか?
ニョリ~ニョリ~ニョリ~ニョリ~ニョリ~ッ
アッ……はっはい……ないで……す
そうなんですね………もう少し続けますよ~
ニョリッニョリッニョリッニョリッニョリッ………
速度を増した出し入れに比例してあの感覚に包まれて、もとい襲われ始めた。
露骨な声を出せない変わりに喉を絞り、掠れた吐息が口から溢れ出ていく。
ハァ~ッハッア~ハァハァハァハァ~ッアァ~ッ
アッアッアッアッアッアァ~ッアッアッアッアッ
思考は働かず挙がらう術もなく、ただ注がれるあの感覚…快感の渦に酔いしれ、夢の中に漂うだけだった。
不意に夢が途切れてしまった。
現実に戻され思考が作動し始めるとこれは何なのかと否定的な思いと、もう終わっしまったのかという名残惜しさが交錯していた。
ゆっくりと波が引いてゆく中で、医師が言う。
何でもないとは思いますが、触診だけでは判断し兼ねています。提案なんですが、医学会は進歩しています。医療機器も追随しています。まだ認知度は低いのですが、子宮頸がん検診でも用いられ始めた器具があるんです。カメラが内蔵されてますから子宮頸部を見られるわけですが、膣壁の粘膜から細胞の採取も出来る優れものなんですね。細胞採取といっても頬を綿棒で擦って細胞を付着させるのと同じなので痛みはありませんよ。これまでのものと違って表面の素材がシリコン製ですから違和感も圧倒的に少ないですよ。人の体温に近づけてから挿入できますから、よく出来てます。
医師の話す言葉は全て頭に入らなかったけれど、以前のものとは比べ物にならないくらいに優れていることは理解出来た。それでも不安はあったが、シリコン製だとか体温に近いとか安心材料も医師の言葉にあった。ここまで受けたのだ、医師を信じて受けることに決めた。
準備をしますからちょっとお待ちくださいね。
医師がそう言うとガサゴソ物音が聞こえたが、待たされる身としてはこんなことは早く済ませてほしかった。
はい、それじゃあ挿入していきますよ~、力を抜いてくださいね~
器具を入れられるのだから心穏やかではなかったが、内蔵が圧迫されるような一時の苦痛を除けばペニスが挿入されるのと変わらなかった。
ゆっくり動かしていきますね~、気分が悪くなったりしたら言ってくださいね。
1回、2回、3回、ピストン運動が始まると直ぐに、あの感覚が蘇り始めた。
あぁ……いい~……気持ちいい~……凄くいい~……
内心の独り言が頭の中を駆け巡る。
でも、と思う。
あまり感じても恥ずかしい醜態を晒すことになる、それだけは避けたい。そうなる前に終わってくれることを願った。
大丈夫ですか~?……痛みとかないですね~?
ンッ……はい、大丈…夫です
悟られないようにハスキーボイスで返答した。
はい、じゃあ続けていきますよ~……少しづつ早めていきますからね~………気分が悪くなったり………
医師の言葉にまともな返答をするのも難儀する。
本当に良く出来た器具だと思った。この医師が邪ないたずらをするとは思えないし。
あぁちょっと待って……だってこれ以上は……ア~ッ待って……ア~ッ待って……ア~ッいい~……アッアッアッアッアァ~…………
理性が怪しくなる中、速まるペニスの動きがもたらす快感に包まれていく。
ニュッリュッ…ニュッリュッ…ニュッリュッ…ニュッリュッ…
指を噛み、再び夢の中を漂い始めた。
求めていた交じりっけのない快感。
後のことなどどうでもいい、今は求めていたい。
いきなり痺れるような違う快感が加わった。
受け止めきれず身を捩るが意味がない。
許容を越えて尚、注がれる勢いに我を失ってゆく。
両手の拳を握り締めプルプルと震わせ、狂う。
無意識に頭を振る、涎が口元を伝い落ちる。
気が遠くなっていった………。
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