新学期。僕と先生の交換日記が始まる。
内容はとても何気ないもので、その日の出来事や食べた物の報告や観たTVの感想等であったが、僕にとっては先生の事を先生の直筆の字で知れるのが嬉しかった。
告白以降、僕は自分の気持ちを整理したつもりであったが、やはり先生の事が好きだ。交換日記という二人だけのやり取りを通して、その気持ちは穏やかではあったが大きく募った。
僕は時折、その気持ちを隠さずに日記に認める。
それからまた暫くやり取りを重ねる中で、先生もまた教師としてでない一人の女性としての心の内を明かすようになり、僕たちは立場を越えて確実に近付いていき、交換日記の開始から2ヶ月が経過した11月某日…。僕たちは先生の車で、知人が居ない少し離れた隣の県の自然公園へ出掛ける事になった。
当日。天気は生憎の小雨。僕は初デートの緊張と高揚から、待ち合わせよりもかなり早めに着いてしまった。まだ薄暗い早朝の空気は肌寒い。
僕は雨宿りがてら建物の庇の下に入り、約束の時間まではまだ随分と先だ…と時計を見るが、その矢先、シルバーの軽自動車がハザードランプを点滅させながら僕の前に停車し助手席側の窓が開いた。
「おはよー。乗ってー」
先生もまた時間よりもかなり早く到着した。僕は促されるままにドアを開けて車に乗り込む。
「おはようございます」
「おはよう。○○君ちょっと早くない?」
「いや、自分だって早いし!」
「ちゃんと寝てきたの?」
「緊張であんまり眠れなかったかも…先生は?」
「寝たよ。10時には寝てた」
「早っ!」
先生は他愛ないお喋りを続けながら運転し、車は人影の少ない駅前の繁華街を抜け、国道から高速道路に入った。
※元投稿はこちら >>