冬休みが過ぎた頃、突然ユズルと板橋が付き合う事になったと告げられた。
はしゃぐユズルの後ろで、静かに板橋が佇んでいた。
板橋は微笑んでいたけれど、俺には心から歓んでいるようには見えなかった。
でもそれは俺の勝手な思い込みだと自分に言い聞かせ、二人を祝福した。
しかしそれは表向きだけのことだった。
心から歓べない自分をはっきりと自覚していた。
心の中にぽっかりと穴があき、グループから離れることも考えていた。
そんな時、カナに告白された。
結局、自分にケジメをつける為に告白を受け入れた。
恋人と友人を一度に無くすことになったが、元々、人付き合いの苦手なセカイは、それほど苦にならなかった。
ただ裏切られた気持ちは残っている。
板橋との縁もこれで切れてしまったと思うと
、正直それだけはかなりキツかった。
あれから1週間がたつ。
しきりにカナからのアプローチがあったが、完全に無視を決め込んでいた。
そのかいがあって、何とかしつこいアプローチも治まりそうだ。
今日も出来るだけ人と話をしたくなくて、昼の弁当をグランドのベンチで食べていた。
一人でのびのびメシが食える。
爽快な気分だった。
こんな場所で食事を取るヤツは居ないはずだ。
満腹感に満たされ、無人のグランドを見渡し、悦に入る。
俺ってジジイみたいだな、、、
まあそれも悪くない。
そんな思いに耽っていると、いきなり声をかけられた。
「セカイ先輩、、、いつもここで、昼食してるんですか?」
見たことも無い二人の女子がいつの間にか傍に立っていた。
「たまにだけど、、、君たち誰?」
「私たち1年なんです、、、先輩が一人でここでに居るのを見て、何しているのか気になって、、、」
「ふーん、物好きだね、、、ところでどうして俺のこと知ってるの?」
「ええっ、、、先輩って有名ですよ、、、すごく背が高くて、イケメンで、、、無口だけど、優しくて、それで合気道をやってて、スゴく強いって、、、」
目をウルウルさせて、堰を切ったようにかたってくる。
「それ、俺じゃ無いって、、、優しく無いし、イケメンでも無いし、弱いし、、、」
「キャッ、謙虚だよ!」
二人がハイタッチではしゃいでいる。
もう訳がわからない。
つづく
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