ソラが家から出てきた。
ちょうど近所の人と出くわして話をしている。
懐かしかった。
久しぶりに見るソラ。
見ているだけで胸が熱くなってしまう。
少し痩せたようだが、相も変わらぬ童顔で以前よりも髪を伸ばしているようだ。
少し大人びた感じがする。
正直に言ってカッコいい。
なぜか悔しい気持ちになってしまう。
「へえー、写真よりずっといいね、、、」
「アオイ、ヘンな気を起こさないでよ、、、」
「任せなさいって、、、じゃあねえ、、」
話を終えたらしいソラが行くのを、ミドリはずっと見つめていた。
離れてアオイがそのあとを追う。
うまくいって欲しい。
そして早くソラと逢えるようになることを願っていた。
ソラは近所の大型商業施設をブラブラしている。
本屋に立ち寄ったが、これといった目的はなく、ただの散歩に見える。
施設のそばの公園のベンチにソラは腰を下ろした。
何か考え事をしているように見える。
これは絶好の機会だ。
アオイは近づくと声をかけた。
「あの、、、Mさんですか?」
「M?違うけど、、、」
ソラがアオイを見つめて言った。
優しそうで澄んだ瞳をしている。
でも、何か哀しげに見えた。
アオイの胸が何故かキュンとしてしまう。
ソラは興味を失ったかのように視線を逸らした。
これは手強そうだ。
アオイは言葉を続けた。
「ごめんなさい、人違いだったみたいです、、、スイマセン、わたし、ここまで来るのに疲れてしまって、、、座っていいですか?」
「いいですけど、、、」
顔も向けずに気のない返事が返ってきた。
ミドリの言っていたとおりだ、、、
アオイは少し離れて腰を下ろした。
「ねえ、すいません、、、本当はMさんなんでしょう?わたし、そんなに思っていた感じと違いましたか?わたしは正直言って、Mさんタイプなんですけど、、、わたしじゃダメですか?」
「なんのことかわからないんだけど、、、どういうこと?」
アオイはミドリと打ち合わせしたストーリーを話し始めた。
昨夜ネットで知り合った大学生のMと今日会う約束をした。
この辺は一度も来たことが無かったけど、この公園を待ち合わせの場所に指定された。
少し不安もあったので、写真のやりとりはしていない。
でもネットのやりとりでは良さそうな人に思えたし、女子高に通っていて男性と知り合う機会も余り無いので、思い切って勇気を出して会いに来たとソラに告げる。
ソラはアオイを見ることもなく話を聞いていた。
普通なら何度もアオイのことを何度も盗み見するはずだ。
これはやっぱりかなり手強そう、、、
再びそう思う。
つづく
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