ミドリは転校した。
隣県の女子校だった。
校則が厳しく、全寮制の高校だ。
ミドリは自らそこを選んだ。
もう遅すぎるかも知れない、でもわたしは変わりたい。
変わらないといけない。
生まれ変わってソラにもう一度逢いたい。
ミドリはそう心に決めた。
そうしないと生きていけないと思っていた。
転校した初日、席に座っていると一人の生徒がやって来て、声をかけられた。
「斉田さん、あなた、どうしてこの学校にきたの?」
ミドリは相手を見た。
びっくりするくらい美しい顔立ちをした女子生徒だった。
前の高校のマリンどころではない、ちょっとケタの違う美形だと思った。
アーモンドのように形のいい大きめの瞳に、上品なたたずまいの唇と鼻、全てが絶妙なバランスで整っている。
艶のある黒髪が肩ほどの長さに揃えられ、緩やかなウェーブを女らしくえがいていた。
160位の身長だが細身で手足がスラリと長いせいか、もっと高く感じる。
姿勢も良く、胸が形よく張っていてバツグンのスタイルをしていた。
すごく大人びた同性から見てもため息が出そうな、いかにも良家のお嬢様というタイプに見える。
「アオイ、よしなよ、、、」
隣の席の子が声をかけてきた。
「ミンは黙っていて、、、、斉田さん、どうせ前の学校で何かやらかしたんでしょう?」
「そうだよ、、、世界で一番大切な人を傷つけたの、、、大好きな人をわたしが裏切って、、、」
目を逸らさずにミドリは言った。
「それは最低だね、、、」
「そう、わたしは最低でクズみたいな女なんだ、、、そんな自分が許せない、、、」
「そうか、、、斉田さん、答えてくれて有難う、、、わたし水城というの、、よろしくね、、、」
きつい目つきだと思っていた瞳が柔らかくなった気がした。
転校して初めて友人ができた。
アオイはクラスカーストの、いや学校カーストの頂点にいるような存在だった。
外見だけでなく学業もダントツのトップ、運動神経もいい。
かなり裕福な家庭に育ち、しかも一人娘で本当のお嬢様だった。
つきあってみてわかったが、それでいてヘンに威張りちらしたり、傲慢なところは微塵も無い。
取っつき辛い部分はあるが、心根の優しい、みんなに慕われている女子だった。
ミドリは男女の違いはあるけど、アオイはソラに似ていると思った。
二人は急速に打ち解け、いい友人になっていった。
ミドリは黒髪に戻し、ほとんど化粧もしなかった。
ミドリの艶のある黒髪が好きだとソラが言っていたのに、わたしはアツシに望まれるまま、あのくだらない男に気に入られたくて、髪を染めた。
本当にバカだった。
ソラはわたしの染めた髪を見て、どんなに傷ついていたんだろう?
胸が締め付けられるように苦しい。
涙がこぼれた。
もう二度と髪を染めたりしない、、、絶対に、、、そう心に誓った。
つづく
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