「加奈子、もう治っていたのか?」
シーツの乱れと、至る所に飛び散った二人の体液のシミが目に入り、気分が悪くなる。
「違うの、、、陸、聞いて、、、わたし、あの人の昔したこと全然知らなくて、、、信じてたのにいきなりキスされて、胸を触られて、、、わたし必死に抵抗したんだよ、、、」
「それで、、、」
陸は冷えた目で加奈子を見る。
躰中にのキスマークが汚らわしく見えた。
「わたし、そのうち、、、気分と躰がおかしくならないことに気づいて、、、治ったのかもしれないと思って、、、」
それは感じていたということだろう。
無理矢理されているのに、、、
おかしくなってるじゃないか、、、
「陸とまたまたできるようになると思って、、、本当に治ったのか試したくて、、、」
「それで最後までか?」
「ごめんなさい、、、ちゃんとイケたら、すぐに陸のところへ行こうと思ってた、、、ずっと陸に早く抱かれたいと思っていたから、、、」
「そんなにキスマークだらけで俺のところに、、、」
慌てたように両腕でキスマークだらけの乳房を隠す。
「こんなになってるなんて知らなかったの、、、知らないうちにあの男が勝手につけたの、、、」
知らないうちにそんな数のキスマークをつけられるはずがない。
加奈子の言い訳は矛盾だらけに聞こえた。
「あんな男にされるのは本当はいやだった、、、早く終わって、陸のところに行きたかった、、、ずっと陸のこと考えてた、、、あんな男、気持ち悪かった、、、陸とするためだけ、陸とできることを確かめたかっただけ、、、、でもごめんなさい、、、本当にごめんなさい、、、」
黙って聞いていたエリが口を開いた。
「加奈子、そういうことは陸くんとだけ、確かめることなのよ、、、他の人なんて絶対にダメ、、、」
言ってももう遅い、エリの言葉に力はなかった。
それにあの終わったあとのキスは何だっんだ?
加奈子の方からしていたじゃないか、、、
加奈子の言葉が何もかも信じることが出来ない。
どうしても加奈子を醒めた目つきで見てしまう。
終わりだ、、、何もかも、、、
「エリさん、、、俺帰ります、、、、、サヨウナラ、、、」
エリは何も言わなかった。
ジッとキツく握りしめた自分の拳を見つめていた。
「待って、陸、いかないで、、、お願い、、、」
陸は部屋を出た。
裸で追いかけようとする加奈子をエリが押しとどめる。
腕をつかみ、悲しげな顔をして加奈子を見つめ、無言で首を左右に振った。
「加奈子、、、躰をきれいにしてきなさい、、、」
加奈子は呆然と床に座り込んだ。
しばらくして、加奈子のスマホがメールの着信音をつげていた。
ハッとして飛びつくようにしてメールを見た。
加奈子は泣き崩れた。
子供のように声をあげて泣いていた。
エリはメールを見た。
加奈子、もう終わりにしよう。
もう加奈子を信じることが出来ない。
もう二度と逢うことも話すこともないと思う。
さようなら
エリさんにも伝えて下さい。
短い文面に陸の決意が込められていた。
エリは黙って優しく加奈子の肩に手を触れると部屋を出た。
寝室に入ると鍵をかけベッドに座り込んだ。
両手で顔を覆った。
涙と嗚咽が溢れてくる。
陸はもうわたしと逢ってくれない。
そういう約束だった。
自分から持ちかけた愚かな約束。
でもあの時は必要だった約束。
わたしの最後の本当の恋が終わった。
エリは自分の口から溢れる嗚咽を止めることが出来なかった。
つづく
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