陸を見つけることは出来なかった。
何度電話してもつながらない。
わたしは愚かな女だ。
目の前の快楽に溺れ、一番大切なものを失おうとしている。
でもいやだ、絶対に陸を失いたくない。
わたしは一晩中、ベッドの上で泣いた。
翌日、わたしはとにかく陸に謝ろうと隣の教室へと急いだ。
陸はいなかった。
「陸は休んでいるぜ、、、」
話したこともない男子がいやらしい目つきで、加奈子の胸を見ながら声をかけてきた。
朝からずっとそうだ。
みんなが加奈子を蔑むような目で、あるいはいやらしい目つきで見つめてきた。
そして誰も声をかけてこない。
凪たち三人も加奈子を見ようともせずに無視している。
みんなわたしの浮気のことを知っている。
「あの女、陸のことを裏切ってチャラい男と浮気していたんだぜ、、、」
陰でみんなが噂している姿が頭に浮かぶ。
まるで針の筵に座らされている気分だった。陸は三日間学校を休んだ。
わたしのせいだ、、、
加奈子は陸に謝りたい気持ちを抑えることが出来ずに、毎夜泣きながらその日を過ごしていた。
電話はつながらず、メールの返事も帰ってこない。
学校でも誰からも話しかけられず、みんなが陸の見方なんだと痛感させられてしまう。
その中、アツヤだけが相も変わらず誘ってくる。
何の反省もせず露骨に加奈子を求めてくる。
もしも今度何かあったら、完全に陸との関係は終わりになる。
加奈子は相手にしなかった。
こんな男に、わたしはどうして、、、
悔やんでも悔やみきれない。
陸が学校に来るようになった。
陸は少しやつれた顔をして、元気がないように見えた。
加奈子は陸に何度も声をかけようとした。
その度に凪たち三人が陸をガードするようにわたしから遠ざけた。
わたしは孤独だった。
学校に来るのも辛い。
でも陸と話すことは出来なくても、陸を見ることは出来る。
そのためだけに加奈子は学校に通い続けた。
そんな日々が続くうちに、噂されることも、そしてアツヤが自分につきまとうことも無くなっていた。
加奈子にとって穏やかな日が戻りつつあった。
加奈子は授業に集中し、時間があるとき気づかれないように、陸を見つめる、そんな毎日を送っていた。
今日も部活に打ち込む陸を遠くから見つめていた。
それだけで幸せな気持ちになれた。
わたしこんなに陸のことが好きだったんだ。
それなのにわたしは合宿中に陸を裏切った。
陸の集中した瞳と滴る汗、、、
男臭い陸のたたずまいに抑え込んでいた加奈子の女が、躰の奥で疼いていた。
どうしてわたしは陸に処女を、わたしのすべてを捧げなかったの?
加奈子は激しく悔やんだ。
でももうあの時に戻ることは出来ない。
以前のように愛してくれなくてもいい。
思いきり陸に抱かれたい。
セフレでも性欲処理だけの女でもいい。
他の男にはもう絶対に触らせない。
だから、陸のそばにいたい。
それだけでいい、、、
涙がこぼれそうになる。
そのとき、後ろから誰かが指先で加奈子の肩を突いてきた。
加奈子は振り向いた。
「凪、、、七海、、、」
「、、、つらすぎるよね、、、、話、、、聞くよ、、、わたしたち二人だけだけど、、、」
加奈子は頷いた。
声を出せなかった。
涙がこぼれそうだったから、、、
つづく
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