次の日の夕方8時ごろ、陸から電話があった。
今部活の帰りで加奈子の家の前にいる、ちょっとだけ逢えないか?そう言われた。
何かあったのだろうか?
わたしはすごく心配になって玄関へと急ぐ。
母のエリに声をかけ、外へ出る。
「陸君だったら、家に入ってもらいなさい、、、」
背中から、そう声をかけられた。
うちの両親は陸がお気に入りだ。
娘の自分から見ても若々しく美しい母は、特に陸の大ファンで、わたし達が別れたと知ったとき、まるで自分のことのように寂しそうにしていたほどだ。
陸は少し離れた場所に立っていた。
「陸、どうしたの?」
やはり別れを告げられるのだろうか?
不安で胸が締め付けられる。
「ううん、、、急に加奈子の顔が見たくなって、、、」
萎みそうになっていた胸に温かいものが流れ込む。
でも陸ダメだよ、、、そんなこと言われたら、、、わたし、、、
陸は加奈子の頬を優しく撫でた。
以前、よくそうしたように、、、
「加奈子はやっぱりキレイだな、、、」
そんなのウソ、、、あの人の方がずっとキレイだ、、、
わたしは顔を背けた。
陸が慌てて手を離す。
「あっ、ゴメン、、、、俺に言われても嬉しくないよな、、、」
ちがう、、、すごく嬉しいよ、、、でも、、、
「でも、、、加奈子の顔が見れて嬉しかった、、、わざわざありがとう、、、、じゃあ、俺、、行くな、、、」
陸の背中が寂しそうに見える。
陸が行ってしまう、、、
せっかく逢いに来てくれたのに、、、
でも陸には彼女がいる、、、
陸が振り向いた。
「ゴメンな加奈子、、、俺、、もうこんなことしないから、、、」
陸、そんなに辛そうな顔をしないで、、、
陸がまた遠くへ行ってしまう、、、
それでもいいの?
もう自分の気持ちを抑えることが出来なかった。
陸にすがりつく。
「そんなこと言わないでよ、、、」
二人のクチビルが重なり合う。
クチビルが、、、舌が、、、そして心がお互いを求め合っていた。
互いに名残を惜しみながら、別れを告げた。
加奈子は陸が見えなくなるまで見送った。
お互いに何度も手をふり合う。
陸が見えなくなっても加奈子は見送り続けた。
母のエリが玄関から出てきた。
「見たぞお、、、チュッチュしてた、、、」
見られたの?
顔が熱くなる。
「もう、、、母さんたら、、、」
「わたしも陸くんとあんなキスしてみたいなぁ、、、」
エリがおどけて言う。
「何言ってるのよ、もう、、、」
母はすぐに真顔になって加奈子に言った。
「加奈子、大事な人は大切にしないと、いなくなっちゃうんだからね、、、」
「そんなのわかってるよ!」
加奈子は走り去るように部屋へ戻った。
つづく
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