一般人の入ることの出来ない会場のエリア内で、陸は女子選手から、そして男子選手からもひっきりなしに声をかけられていた。
他校の女子選手たちなどは、馴れ馴れしく陸に声をかけ一緒に写真を撮って大喜びしていた。
陸は誰にでも穏やかに対応する。
わたしは表には出さないが、ずっとヤキモキしていた。
わたしの陸に近づかないで、陸もそんな女たちを相手にしないでと心の中で思っていた。どうしてもやっぱり嫉妬してしまう。
そんななか、陸は再び勝ち上がりベスト4を決めた。
勝って試合場を後にするとき、陸が私たちを見て手を振ってくれた。
凪たちは両手をあげてそれに応える。
わたしは片手を胸元で小さく振りながら、心の中で陸に話しかける。
陸、すごくカッコいいよ、、、でも早く二人になりたいよ、、、イッパイ陸に抱かれたいよ、、、わたしって不謹慎だ、、、わたしってワガママだね、、、
私たちの周りからキャーと声があがる。
自分たちに手を振ってくれたと勘違いしているのだ。
「す、すごいね、、、」
凪が言った。
「この人たち何なの?陸のファンクラブ?」
七海が応えるようにそう言った。
「加奈子、すごいでしょう?陸はモテモテなんだよ、、、」
「うん、、、知らなかった、、、こんなだなんて、、、」
「みんな、陸の彼女のイスを狙っているんだから、、、すごい気合いだよね、、、」
二人はまだ、わたしたちがまた付き合い出したのを知らない。
「陸、モテすぎだよね、、、大変だ、、、」
そこへヒロがみんなの飲み物を持ってきてくれた。
「陸だけじゃ無いよ、、、七海たちのこと、すごく可愛い三人組がいるってチラホラ言われてるぞ、、、」
「えーっ、ウソでしょう?」
「ウソじゃないよ、、、」
「そういえば、さっきからチラチラ男たちが、、、少し気になっていたんだよね、、、どうする加奈子、、、」
「そんな、、、わたしは違うよ、、、凪と七海のことだよ、、、わたしはオマケだよ、、、」
「ハイハイ、そんなの相手にしない、、、ほら準決すぐ始まるよ、、、」
凪は試合場へと目を向けた。
相手は一年年上のダントツの優勝候補だと凪が教えてくれた。
陸は健闘した。
延長でも決着がつかず旗判定で惜しくも負けてしまった。
陸は勝負に敗れても、いつもと変わらず穏やかな表情を浮かべていた。
私たちは悔しくてしょうがなかった。
陸だって本当はそうだと思う。
でも陸は勝者を讃え、周りを気遣っている。
凪がポツリと言った。
「陸って、スゴイね、、、」
わたしは凪の言葉の意味がすごくよくわかった。
目頭が熱くなった。
表彰式が終わり、私たちは陸と合流して一緒に帰ろうとしていた。
みんながそれぞれに陸をねぎらう。
わたしは陸の背中を撫でながら、慰めてあげたいと心の中で思っていた。
「五島君、、、ちょっといい?」
王林高校の制服を着た170近くはある長身の女子高生が陸に声をかけてきた。
手足がスラリと長くまるでモデルのような体型をしていた。
そしてお人形のように整った美しい顔立ちで、大人びた雰囲気を醸し出した女子高生だった。
艶のあるショートシャギーの黒髪がとてもよく似合っていた。
二人は離れた場所で話を始めた。
「あれ王林の山吹さんだよね、、、」
「そう、、、今、全国で注目の的の山吹レナだね、、、」
「誰なの?」
「昨年、彗星のように現れて、あっと言うまに全国優勝した天才美人剣士、、、雑誌出まくりの有名人、、、」
そう言われてみると、どこかで見たことがある。
でもそんな人が陸に一体どんな用事なんだろう?すごく気になる。
「今年も優勝して全国大会連覇を狙うってところか、、、」
「それにしても陸に何の用なんだろう?山吹さんて私たちより1コ上だったよね?」
「うん、そう三年生、、、、えっ、何となくヤバくね、、、」
山吹は楽しそうに陸に話しかけながら、やたらとボディタッチを繰り返していた。
「うん、かなり、、ヤバい、、、」
陸は一人戻ってきた。
つづく
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