長くなりましたが、読んでくださってありがとうございました。
毎回温かいコメントもたくさん、本当にありがとうございました。
とっても励みになりました!!
皆さんが満足のいくラストになったか分かりませんが、好き勝手に書かせてもらって楽しかったです(*^^*)
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「高木さん」
ベッドに寝転びながら、橋本くんが手招きしてくる。
私はおずおずと橋本くんに腕枕され、頭を撫でられる。
「…初体験、どうでしたか?」
Wao!This槌is槌ピロートーク!!!
「何か…頭の中ぐちゃぐちゃで…」
「まんこもぐちゃぐちゃでしたよ(笑)」
「なっ!そういうこと言うな!」
ペチペチと叩くと、橋本くんはケラケラと笑う。
何だこれ…いわゆる「イチャイチャ」ってやつか!?
急にむず痒くなる。
「俺はすっげぇ気持ち良かったですよ」
橋本くんは意識的か無意識的か分からないけど、私に自信をつけさせるような言葉をずっとくれる。
セックスなんて出来るわけないと、卑屈になっていた私に。
「わ、私も…気持ち良かった…です」
「それは良かった」
優しく微笑むもんだから、私の胸はぎゅうぎゅうに締め付けられる。
ヤリチンのプライドで私を抱いてくれただけで、彼は別に私のことが好きなわけではない。
ほだされるな、私!!
それにしても…
「…ヤリチンって、もっと好き勝手やって、入れれさえすれば満足するもんかと思ってた」
「ははっ、何すかそれ。そんなのただのオナニーっすよ」
「女のことをただの性欲処理の道具としか思ってなくて、己の性欲が満たされればそれで良いと言うか…」
「どこの鬼畜っすか。てか、俺のこともそんな奴だと思ってたんすか?」
「…全然思ってなかったと言えば、嘘になるけど…」
「うわ、ひでぇ。また傷つけられた~」
わざとらしく橋本くんは泣いたふりをする。
「わっ!で、でも橋本くんは全然そんなことなくて!さ、さすがモテ男のヤリチンと言いますか、いろんな技があって、その、今後のイメプレのために、大変勉強になりました!」
慌ててそうフォローすると、ブハッと橋本くんが吹き出す。
「やっぱ、おもろいっすねぇ。でも俺、別に技とかないっすよ」
おいおい、玄人が何か言ってますわ。
「何すか、その顔(笑)でもほんと、ないっすよ。相手が痛がってないか、気持ち良さそうか…それだけっす」
『それだけ』がサラリと出来るからこそ、女は橋本くんとのセックスに満足するんだろう。
「高木さんもイメプレの時そうでしょ?相手の反応をよく見て、相手が気持ち良くなることをする。そしたら向こうもこっちに気持ち良くなって欲しいって思う」
確かに、橋本くんにも気持ち良くなって欲しいって思った。
「俺は、好きとかあんま分かんないって言いましたけど…相手を思いやってセックスしたり、一生懸命に求め合ってる時の女の子は、みんな可愛いって思いますよ」
頭をポンポンと撫でながら、橋本くんは笑う。
「高木さんも、すっげぇ可愛かったですよ。
自信持って、これからたくさん良いセックスしてくださいね」
「……うぅ~!橋本くんは、セックスセラピストか何かの方ですか…?」
さっきの橋本くんの真似で、私はわざとらしく泣いたふりをする。
またケラケラと笑う橋本くんに抱かれながら、私は少しだけ、本当に泣いてしまった。
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「さて、そろそろ出ますか?」
私はさっきからどうしても言い出せなかったことを、覚悟を決めて言うことにした。
「高木さん?」
「あの、最後にひとつだけ…」
ベッドの上で正座をし、ガバッと頭を下げる。
ええい!ここまで来たら、恥も外聞もない!
「……ふ、フェラチオもついでに、教えてください!!」
一瞬静まり返り、橋本くんが爆笑する。
「はぁ~改まって何かと思えば、ブフッ…ど、どうせイメプレの中で、リアルなフェラ表現がしたいとか思ってんでしょ~」
うっ、図星…!
「もぉ~ほんと高木さん…ふふ、いいっすよ。延長戦で(笑)」
こうして私は、スーパーヤリチンセラピスト(再改名)から直々にフェラチオ講座を受けることに成功したのであった!
(すみません、ホテルの延長料金は支払います…)
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橋本くんとセックスした夜から、2ヶ月がたった。
あの後、丁寧なフェラチオ講座を受けたのだが、勃起したからと言うことでもう一度セックスをした。
私の希望で後背位からのセックスも体験させてもらったのだが、あまりの気持ち良さに私は信じられないくらい喘いでしまった。
よし、これからは後背位のイメプレを積極的に取り入れていこう、と心に決めたくらいだ。
そんなセックスに関して聖人のような橋本くん。
「俺『彼氏になって』以外だったら、自分に出来ることは応えますよ」
と笑いながら言っていた。
うっかり忘れそうになるけど、橋本くんはセックスが好きなだけで、相手のことが好きと言うわけではない。
相手を思いやって至高のセックスに励む、謎の向上心の塊ではあるが…
私自身、恥ずかしながら橋本くんに惚れそうになったが、ハッキリした彼の態度に目が覚めた。
一応連絡先は交換したものの、連絡を取り合うこともなかった。
あのセックス以来、私は何となく自分のことを『悪くないかもな』なんて思えるようになり、化粧なんか始めてみたり、少しきれいな色の服を着てみたり……
なんてことは一切なく、変わらず地味子な生活を送っていた。
そして夜は相も変わらずイメプレ三昧。
…変わったことがあるとすれば、
『最近のnanaさんのイメ、ヤバいくらいリアルで即イキw』
『nanaさんのフェライメ、たまんないです!!』
『nanaって責め専かと思ってたけど、受けイメもリアルなのな。もう無双じゃん(笑)』
とまぁ、人気がさらにうなぎ登りなのである。
これもすべて、橋本くんのお陰と言っても過言ではない。
最近はご新規も増えて、私もプライベートはなかなか忙しいのだ。
「えーっと、次はこの人か。HN けーた(26)『nanaさんのイメプレ見てファンになりました。優しく責められてみたいです!』かぁ…」
『けーたさん、こんばんは。お待たせしちゃってごめんなさい。今日は一緒に気持ち良くなりましょうね(*^^*)』
『nanaさん、こんばんは。今日は楽しみにしていました!よろしくお願いします!』
『けーたさんはM男くんなのかな?笑
どんなことされたいのか教えてね。
nanaのスケベな姿もたくさん見ていってください♪』
『嬉しいです!よろしくお願いします!』
ふふ、一生懸命で可愛いな。
そこからは橋本くん直伝のフェラも駆使しながら、ご新規さんとスケベで気持ち良いイメプレを堪能する。
『ぶちゅっ、クチュンックチュン…おちんちん、こんなに固くなってるね。ここ…この裏側、気持ちいいでしょ?』
『あぁ、nanaさん!すっごい気持ちいいです!!』
『あーあ、こんなにしちゃって…悪いおちんちんだなぁ。おっぱいでお仕置きしちゃお』
実はフェラチオ講座の時、パイズリのやり方まで教えていただいたのだ。
お陰でリアルな表現ができますわ。
『あんっ、勃起乳首がプルプルの亀頭に擦れて気持ちいいのぉ…』
『nanaさん、俺もう…我慢できないです!』
その後は挿入され、最近お気に入りの後背位で獣のように貪り合う。
イメプレなので、もちろん生セックスだし『おまんこに熱いのぶっかけてぇ!』と、中出しも躊躇なくおねだりできる。
しかし、ここと現実の境界線だけはきちんと引いておこうと、中出しをせがむ度に思い出す。
『nanaさん、すっごく気持ち良かったです。初めてで何だか自分ばっかりになってしまい、nanaさんのこと満足させられたかが不安です。またチャレンジさせてくださいね』
あは、可愛いなぁこの子♪
お気に入りに入れておこう。
「ふぅ~~疲れたぁ」
時間は0時を回っていたが、いつものように通知は途切れない。
「今日はもう無理かなぁ」とスマホを手に取ると、イメプレアプリ以外からメッセージ通知が入っていた。
こんな時間に誰だ。
『お疲れ様です、橋本です』
一行目を目にした途端、私はスマホを落としかけた。
「えっ、な、橋本くん?」
『さっきはありがとうございました』
え?
『つーか、あなたどんだけ人気なんですか。2ヶ月待ちってヤバいっすね(笑)』
は?
『初めてでしたけど、想像以上に良かったです。特にフェラのくだりは、教えた甲斐がありました(笑)』
んん!?
『相変わらずこっちの反応よく見てますよね。こうして欲しいことを、言わなくてもしてくれるからめちゃくちゃスムーズでびっくりしました』
は、は、は…
『さっきも言いましたが、高木さんを満足させられなかった感じがあって、自分としてはちょっと納得いかないところもあります。
また申し込むのでお願いしますね☆』
橋本ぉぉーーーーー!!!!!!
航大→こうた→こーた→Kた→けーた………
そういうことかーーーー!!!!
私は急いで電話を掛けると、橋本くんが『もしもーし』と悪びれない声で電話に出る。
「ちょっとぉ!どういうことよ!さっきのけーたって、橋本くんなの!?」
『あ、やっぱ気付いてなかったですよね。だって~俺が普通に申し込んでも、絶対受け付けてくんないでしょ』
「あ、あ、当たり前でしょう!年齢までサバ読んで、騙したわねぇ~!!」
『俺も高木さんとイメプレしてみたかったんですもん。いや~すごかったっすよ、nanaさん☆』
「ムキーーー!!バカにしてるでしょーー!!私は知り合いとは絶対イメプレしないって決めてるんだから!!」
『そうなんすか?それは残念だけど、まぁいいや。
てか、その調子だと俺のメッセージ、全部読んでないでしょ』
「はぁ!?」
『相手の反応や出方を細かく見る…はぁ~イメプレでは完璧なんだけどなぁ~。俺、今日は疲れたんで寝ますね、お休みなさーい』
「ちょっと橋本くん!」
ピッと電話が切られる。
「キィー!!何なのよ、あのヤリチン野郎!人のテリトリーに無断で入ってくるなんて!!」
プリプリしながらスマホのメッセージをもう一度見る。
「…こんなバカ丁寧に感想送っちゃって…うぅ、めちゃくちゃ恥ずかしい…」
橋本くんの長々としたメッセージを薄目で読み直す。
『また申し込むのでお願いしますね☆』
やかましいわ!!
『イメプレは俺にとって未開の地って感じで難しかったですが、すごく勉強になりました』
真面目か!!
『でもやっぱり、俺は実際にヤル方が肌に合ってるかなぁと思います』
はんっ!ヤリチンめ!!
『イメプレしてたら、またヤリたくなりました。
良かったら今週末にでも、またヤリませんか?』
……ん?
『一応これお誘いなんで、ちゃんと返事くださいね』
はい?
『念のため言っときますけど、俺から誘うって結構レアです。ではお休みなさい』
ぬぁぁぁーーーー!!??
え、え、え、エマージェンシー……なの、か??
「うぅぅぅぅ……くっそぉぉ!騙されるな、私!!ほだされるなぁぁ、私ぃぃ!!!」
頭をポカポカ叩きながら悶絶する。
…何が「橋本くんに惚れそうになった」だよ。
私はとっくに惚れてしまっていたのだ、認めたくなかっただけで。
「あぁぁ~あんな男に惚れてしまっては、人生詰むぅぅーーー!!」
そんなことは百も承知である。
しかし、それでも止められないこの気持ち…
「こ、これが……恋…」
私はガクンと項垂れる。
「うわぁぁぁーーこんなんじゃ眠れーん!!!」
私はもう一度スマホを手に取る。
『……もしもーし。もぉ、俺寝るって言ったでしょ~』
「あ、あ、あんなメッセージ送りつけといて、勝手に寝てんじゃないわよぉ!!」
『あ~見ました?何、もうお返事くれるんですか?』
「っっ!!!ど、どういうつもりよぉ…」
人の気も知らないで!!
『どうもこうも、高木さんとまたヤリたいんですよ。
セックスできる子はたくさんいますけど、何でですかねぇ~高木さんとまたヤリたいんですよね』
「~~~!!!」
ダメだ奈々子!気を確かに持て!!
『さっきのイメプレでのバック、気持ち良かったですねぇ。でも実際にヤった時も、高木さんめっちゃヨガってたじゃないっすか。
…あの顔、もう1回させたいなぁ』
耳元で聞こえてくる橋本くんの声に、キュゥゥと下腹部が反応する。
『あ、もしかしてこれ、テレフォンセックスの流れっすか?それでも俺は良いですけど』
「そ、そんなわけないでしょ!」
『でも高木さん、今めっちゃ濡れちゃってるんじゃないっすか?』
「…うるさいなぁ」
『はは、図星だ。ほんとスケベだなぁ………もしかして、週末まで待てない?』
「っっ!!」
心臓を鷲掴みにされた気持ちになった。
『………』
「………」
落ち着け、気を確かに…
『…家、抵抗無いなら教えてくれます?
そしたら、今から行きますよ』
「…あ…」
ダメ!ほんとに人生詰むぞ!!
「会いたい…今すぐ…」
『……了解っす。後で住所送ってください』
そう言って電話は切られた。
私は脱力感に襲われながらも、震える指で橋本くんに住所を送る。
はぁ~~やっちゃいましたな、私。
まもなく、スーパーヤリチンセラピ…いや……私の“好きな人”が部屋にやって来ます。
勝算なしの100理ゲーって感じだけど、とりあえずシャワーを浴びてこようか。
『シャワーなんか浴びて、ヤル気満々っすね』なんて笑われるかもしれないな…
さてさてここからは、アラサー女のカッコ悪い片想いの話になりそうです。
お目汚しにならないように、ひとまずここで退散します。
皆さま、相手を思いやり、自信を持って、良いセックスをいたしましょうね。
それでは皆さま、さよ…
ピンポーン
「…早いわぁ!まだ途中だよぉ!」
「え~何の途中っすか。それより、バイク飛ばしてきたんで死ぬほど寒いっす……あっためて」
ぎゅうっと冷たい身体に抱き締められる。
うぅ、私ってば思った以上にチョロい女かもしれません。
それでは皆さま、さようなら。
〈おわり〉
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