<灰色の瞳 -その2- >
臨床心理士として様々な現場を経験してきた私に、
ある高校のスクールカウンセラーの依頼がきた。
その高校には、あの『灰色の瞳の少女・里帆』がいた。
彼女の告白は、今までに見聞したことがない衝撃的な内容だった。
葛藤する彼女を何とか救いたいと思った。
「愛」などという曖昧な言葉を信じてはいなかったが、
もしこの世に愛が存在するのだとしたら、
この時の感情こそが、そうだったのかもしれない。
丁寧なカウンセリングを続けた結果、
里帆の精神は、少しずつではあるが、落着きを取り戻していった。
「先生、先生」と笑顔で話しかけてくるようになった。
しかしその一方で、噂話が独り歩きをして、
校内や狭い町に広がりつつあることも知っていた。
「それじゃあ、また1週間後に。」
そう言った私の言葉に、彼女は軽くうなづき、
何も言わずに部屋を出ていった。
そんな彼女の横顔を、
私はただぼんやりと見ているだけだった。
1週間後、里帆から短い手紙が届いた。
「先生、ありがとう。さようなら。」
卒業を待たずに、里帆はこの町から出て行った。
手紙の最後には、あの大きな灰色の瞳からこぼれ落ちた
涙の跡が、ひとしずく...
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