青く黒い経験 2
今とは違い スマホどころか携帯電話そのものがない時代 スーパーの外で 道ゆく人やスーパーに出入りする人達を眺めながら2人をまった。
約束の13:30を少しすぎた頃 自転車にのった2人がやってきた。
2人の近所の駄菓子屋に寄ってきたのと、思いのほか時間がかかったらしい。
そんな話をしながら自転車を押してる2人と 歩きなが俺の家に向かった。
『ただいま』
『こんにちはぁ』
の声に 母が玄関にでてきた。
『あっ、あぁ、いらっしゃい、ど、どぅぞ』
母は 男子が来るものと思いこんでいたらしく
その声は 少し裏返っていた。
『さぁ、どぅぞ、あがって』
『一応、母さんにも ご挨拶させてね』
台所のテーブル、俺と母が並んで座り 2人が対面に並んで座った。
「大丈夫よ、皆して そんなに硬くならなくても、お説教しようって訳じゃないから」
「男の子だとばっかり思ってたから ちょっとビックリしたけど」
「引っ越してきて間もないし、皆 受験で大変で 友達なんて出来るのかしら?って」
「だから嬉しいの。こぅして遊びにきてくれて。宿題やるんでしょう、2人は何処(高校)受けるの?」
とっ散らかった母の言葉が止まらない。
2人は俯いてしまった。
「…かぁさん」と母を見た。
「あらーっ、ゴメンなさいね、私ばっかり」
「根岸さんと綿貫さん」
俺がそぅ言うと顔を上げた2人が見合わせた。
「根岸真知子です、初めまして」
「綿貫幸子です、初めまして」
「山根健一の母です、初めまして」
なんだか滅茶苦茶だった。
「宿題やるんでしょう?」
「持ってく?、飲み物とか お菓子とか」
「あっ、少しなら…」
とタヌ子が紙袋を俺に見せた。
「あら、流石 女の子ね」
「わかった、あとからジュースとか持ってってあげるから、ほらほら」
「それとも もっと説教聞きたい?」
「ンじゃお願い、行こ こっち」
『ッふぁー』、3人で俺の部屋に入ったとたん 根岸が漏らした。
3人3様に緊張していた。
六畳の部屋に ベッド 机 幅広のカラーボックスと その上にコンポとテレビ 部屋の真ん中に小さなガラステーブル。
2人が持ってきてくれた紙袋は机の上に置いて、テーブルの上に宿題をひろけて そのテーブルを囲む様に3人で座った。
「ちょっとぉ、開けてぇ、ジュース、ほら」
程なくして母の声がした。
ドアをあけ、トレイを受け取ってはみたものの、置き場に困り右往左往している俺に
「なんだか狭そうね、向こうのテーブルにしたら?、台所の」と、母が言った。
俺はトレイで 机の上の紙袋を押しやり 机の上にトレイを置いた。
そして「ちょっとゴメン」と、テーブルをカラーボックスに押しつけ
「これなら大丈夫、なんとかなるよ」
俺がそぅ言うと
「そぅお?」
と、母がドアを閉めて戻って行った。
「ねぇ山根くん 初めて?」
「そのぉ、女の子 家に連れてくるのとか」
と、根岸が聞いてきて
「その、お母さんがさ、何て言うか…」
「彼女とかは?、向こう(故郷)で…」
と、続けた。
「だから、無いって、そんな事、1度も」
「だから どぅしていいか 分かんないんじゃん、おふくろ」
「俺だって初めてだし、その、女子なんて」
「根岸達は?、有んの、他の男子んち とか」
「私達だって初めてよぉ、ねぇ さっちゃん」
『幸子』の定番のアダ名『さっちゃん』、根岸のことは『まぁちゃん』、学校以外での2人は 小さい頃から ずっと そぅ呼びあってきたらしい。
「ジュースとって」
机を背にして座っている根岸に頼んだ。
根岸が立ち上がって 両手にコップを持った。
それを受け取ろうと たぬ子も立ち上がった。
制服以外の2人を初めてみた。
スーパーから今まで、緊張していて ろくに見てもいなかったが、私服姿の2人を初め てまともに見た。
根岸は本当に細い、と言うか何の凹凸もない。
細身のジーパンがダブついている。
たぬ子はたぬ子で変わらぬ『丸さ』。
思春期の女の子 本人なりに気にしているのかもしれない、フレアなスカートに ゆったり目のTシャツ、学校で 体育着ごしに観察したブラジャーとは ブラジャーそのものが 今日は違う様に思えた、Tシャツの『横縞の歪みかた』から『おっぱい』を意識し始めていた。
「じぁ、あれ?。無いの?、女子と出掛けたりとか、そぅいうの」
また 根岸が聞いてきた。
2人の間の主導権は どうやら根岸にあるらしい、そんなふうに思った。
「無いよぉ、そんなの」
「じぁ、手 繋いだりとかも?」
「無いって。そりゃぁ 幼稚園とか1年生とか そんぐらいの時なら そんな幼馴染みも居たけど、段々とさ。お前らだってそぅなんじゃないの?」
「それとも あれ?、根岸は有んの?、誰かと『デート』みたいな事、たぬ子は?有んの」
「まさかぁ、ねぇ さっちゃん」
「そんな。有るわけないじゃん」
2人が同時に答えた。
「…だってさ。山根くんだって 誰かに聞いたんじゃないの?加藤とかにさ。その、私とサッちゃんが、その、アレだって、そんな事ないけどさ、アレだなんて。そんくらい 一緒なんだもん 他の男子となんて、ねぇ さっちゃん?」
「そうよぉ、『アレ』なんて無いから絶対、ねぇ まぁちゃん」
「ふぅん、そぅなんだ」
「それはそぅとさ山根くん、何で私は『根岸』で、さっちゃんは『たぬ子』なの?。山根くんは?、山根くんは やっぱり『健ちゃん』だった?『健ちゃん』て呼ばれてたの?」
「俺はそぅだね、『健ちゃん』だったね、今だって目の前の家のオバサンや 親戚の伯父さん叔母さんからは『健ちゃん』だし。小さい頃は『けん坊』とかだったなぁ」
「それで?、私達は?、何で?」
「何で?、って。クラスの皆も そう呼んでるしさ。その方が何だか『クラスメート』みたいじゃん。お前らみたく『幼馴染み』じゃないんだし。ダメなの そぅ呼んじゃ」
「ダメって事はないけど。ねぇ さっちゃん」
「うぅん??。いいじゃない、どっちでも」
「もしよ、もしも誰かと その『お付き合い』みたいな事になっとしたら 何か変わっちゃたりするの?呼び方とか、そぅいぅ事なの?まぁちゃんが言ってる事って。『幼馴染み』には成れないけど 良いじゃない『幼馴染み みたいな仲良し』で。呼びたいときに呼びたい様に呼べば、ダメなのかなぁ それじゃ」
「もお!。始まった。」
「あんた 時々 そぅいぅ事 言うわよね、『お姉さん』みたいにさッ」
「小っちゃくって、まん丸の『たぬ子』のくせに、もぉ」
「うるさいわよッ、あんただって『エンピツ』って言われんのが嫌で そんなに髪伸ばしてるくせに、なによ!、校則違反なんだからねッ、そんな長いの」
「そんな事 どぅだって良いでしょ」
「それより山根くん、本当?、誰も居なかったの、彼女とか」
「そぅ、それ、手紙でだって ちゃんと答えてくれてないし、どぅなの?」
『ヤバい』と思ったのも束の間、また普通に話し出す2人。
こんなふうに 喧嘩と仲直りを繰り返して 2人はこれまで やって来たのだろう。
喧嘩をしたばかりだといぅのに『ケタケタ』と笑う2人の『アレ』の真相を確めずには いられなくなった。
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