雪は降っていないが往来する人たちの仕草や表情が寒々しかった。
少しの期待と緊張からか、グラスを早々に空にするとまた喫煙所に向かった。
ドアの窓から女性を見た。相変わらず熟年男性は美熟女と戯れている。ボトルが二本並んでいた。
連れ合いの女性が気付きこっちに向かって来るのが見えた。
鼓動が高鳴った。
「さっきの言葉、本気?」火を貰える?という仕草の後、煙の出る女性の口元から零れ落ちた。
「今日でなくても、内緒で、火遊び相手になりますよ」言い慣れた言葉では無かったが、幾度となく妄想してきた自分像になりきり、精一杯落ち着いてみせた。
「彼女に悪いわ」「彼女はいないですよ。いないから一人で飲んでたんです」お互いが切り出すタイミングを探るだけの会話。
「そんなに、抱きたい?」「抱かれたい?」「私が質問したの」
チラリと自分の膨らみに目線を向け「確認してみて」と笑ってみせた。
ニヤリと笑いながらそっと手の甲でなぞりあげ「かたい」と言った。
「キスしたい」ドアの窓枠から隠れるように唇、舌を絡める。
連絡先を手早く交換し席に戻る。ワインを追加する。呂律が少し怪しい。
自分自身が、熱くなっているのが分かる。
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