ドアの外と表の扉の間にはスペースがあり、そこに簡易なスタンド式灰皿があった。
煙草に火をつけるとカップルの男性が連れ合いを背に熟年女性と談笑していた。
綺麗に枯れた、美熟女だった。
紫やオレンジの重い色の花が配されたストールを巻き、カジュアルなパンツスーツで華やかだった。
カップルの男性は夢中で話を振り、美熟女は笑った。そして水のように白ワインを呷っていた。
熟年カップルの連れ合いの女性が喫煙所に来た。思わず「旦那さん大変ですね」と声を掛けていた。ツンとした童顔で小柄、程よく肉付きの良い女性だった。
「あれは彼氏」と煙を吐き終えたあと言った。思いがけない言葉で思わず色々な言葉を飲む。
「あなたは一人なの?いい男なのに」お世辞を言う顔からは感情が溢れて来ず、思わず目を逸らした。少し酔いが回っていたこともあり、女性の身体つきをバレないように盗み見た。
「彼女がいる前で他の女口説くってどうなの」本当に怒っているようには見えないが、日常のことで呆れているだけなのだろうか。
「それでは今夜は僕が相手しますよ」冗談に本気の気持ちを乗せた、ずるい言葉だった。
「少ししたらまたココに来ます」それだけ言うと席に戻り、ホットワインを追加した。
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