ある会社の思い出48
移動14
窓にコツンと何かが当たる音で僕はうたた寝から目を覚ました。
気がつくとパンツも履かないまま寝ていた。ちょっとぶざまな姿の自分。
倒れたままの脚立の上に放り投げていたパンツだけ履いて、窓際まで這って行って、サッシのガラス窓を開けて、ベランダに転がってるものを拾った。
それはコルク栓を包んだ紙。
広げるとおしゃれな便箋に、こう書かれていた。
さっきはのぞき見してごめんなさい。
はだかのまま眠ってるので、風邪引かないかなと心配。
どうしても頼みたいことがあるので、いらしてください。
ウェストサイドパレス307
吉田瑠璃
そうか、向かいのベランダでずっと覗き見していた吉田さんの奥さんが投げ入れたんだ。
僕は四つん這いのまま、顔を上げて向かいのベランダを見た。
レースのカーテンが揺れて、今、吉田さんの奥さんは室内に戻ったみたいだ。
頼みたいことって何だろう?
何かクレームでも言われるのかな?叱られるのかな?
悪いのは他人の部屋を覗き見していたあの人の方だけど、これ見よがしにセックスを見せつけた自分が何か言われるような気がして、ちょっと怖い。
僕は、要さんに解決してもらいたくて、不動産屋に電話。でも、電話は転送されて誰も出ない。
もう一度、便箋を読んでみると、僕が風邪引くのを心配してくれてる優しい言葉が書いてある。
ちょっと怖いけれど、このまま会わないままだと後悔しそう。
僕はきちんとジーンズ地のジャケットも着て、ウエストサイドパレスというちょっと立派な隣のビルのエレベーターに乗って3階の307号室のチャイムを鳴らした。
すぐに扉が半開きになって、戸田英利加そっくりのかわいらしい若奥さんが顔を出した。
あっ、お向かいの、、、
彼女はそう言うと顔を真っ赤にして、大きな目を伏せた。
僕は、「ありがとうございます。おかげで風邪引かないですみました」とあいさつした。
「ともかく入って、、、」
まだ女子大生みたいな吉田瑠璃が扉を開いて、僕の手を引くように部屋の中に導いた。
部屋はむせるようなバラの芳香剤の匂い。
彼女はなぜかブラウスのボタンを外していてノーブラ。
いきなり誘惑されるのかなと身構えたけれど、そういうことじゃないみたい。
僕がブラウスを押し上げる乳首のかたちを見ていることに気づいた吉田瑠璃さん。「わたし、今、搾乳してたんです」と言い訳みたいに言うと、後ろのテーブルの上に転がっていた搾乳器を指差した。それは、モーターがむき出しになったコード付きの搾乳器で、モーターの横に付いたプラスチック製の筒にミルクがたくさん絞り出されてた。
僕
「赤ちゃんがいるの?」
瑠璃
「そうなの、隣の部屋でスヤスヤ寝てます。」
ちょっと間があいて、、、
瑠璃
「レモンハウジングの人、なんか言ってませんでしたか? わたしのこと」
僕
「いえ、なんにも、、、」と嘘をつく。
瑠璃
「実はわたしたち夫婦の夜の営みが騒音になってるって注意しに来たんです。あの人、、、さっき、あなたと抱き合ってた女の人」
僕
「そうなんですか?
でも仕方ないですよね。自然なことだし、、、」
瑠璃
「そうじゃないんです。夫は子供ができてから、すっかりわたしのからだに興味を失ったみたいなんです。
わたしのおっぱいから母乳が出るようになったら、なんかその気にならないよって言って、触ってもくれなくなったの。
だから、あの声は夫婦の営みの声じゃなくて、寝ちゃった夫の隣で、わたしがひとりでオナニーして叫んでるよがり声、、、」
僕
「なんかひどい話だし、かなしいですね、そういうの」
ほんとうにそう思った。
瑠璃
「あなた、優しいのね」
「なんていうの?お名前」
僕
「林葉、、、林葉宗介です。」
瑠璃
「お願いがあるの、宗介さん。さっきからおっぱいが張って張って困ってる。あのアメリカ製の搾乳器だと乳首がちぎれそうになって痛いの。
もっと優しく宗介さんに吸い出してもらいたいな」
僕
「いいですよ」
顔には出さなかったけれど、やったーと踊りだしたいくらいうれしかった。
瑠璃
「そのかわり、おっぱい吸ってくれてる間、宗介さんのココ、さすってあげるね」
そう言うと、吉田瑠璃は僕をいたずらっぽい目で見つめながら、僕の股間に手を置いた。
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