ある会社の思い出98
(前回通算97回でした)
社員寮30
特徴もない普通の引き戸に何本か指をかけて、親指だけ指紋認証に当てるると、ロックが外れる音がした。
そのまま左に扉をスライド。
入ると、蒼ざめたLEDの電灯が自動的に着いた。
右手にパーティション。左側面の壁と正面の壁は何もなかった。
パーティションを回り込んで、右手の壁面を見て僕はビックリした。
たぶん40インチサイズの液晶テレビというか液晶モニターが壁一面に6つ並んでいる。縦に3台、横に2台ずつ。
どのモニターもハッキリした何かの画像を鮮明に映し出している。
そのうち、1番左の画面に動きがあって目を向けると、、、、
風呂場でシャワーを浴びてる美久の裸身。気持ちよさそうに頭をのけぞらせて、肩のあたりにシャワーの温水を勢いよくかけている。
そのモニターの枠の右下のところに、301というレタリングの数字がきちんと白くペイントされていた。
僕は思わず声に出してつぶやいた。
も、もしかして、、、
(真知子)
そうよ、、、
隠し撮り、、、
林葉さんが見てるのは、全部、このマンションに住む女性達を隠し撮りしてる映像なの、、、
(僕)
そんなこと、、、どうして?
・・・(食い入るように一つ一つの画面を見ながら)
それに、いったいなぜ?
・・・(混乱しながら、目はむさぼるように食い入って見つめてしまう)
そんなことしてるんですか?
(常識では、考えられないし、考えをまとめられない)
あまりのことで、僕は呆然として、、、つぶやくように真知子に聞いていた。
(真知子)
(含み笑いをしながら)
そんな質問しながら、林葉さん、目を爛々とさせてるわよ。
林葉さんの目の方が頭よりも正直よ。
全部消しちゃってもいいのよ、、、そうする?
真知子が各モニターの下にあるシーソー式のスイッチをオフにしようと手をかけようとした時、僕の手は彼女の手首を本能的につかんでいた。
(僕)
待ってください。
り、理由を、、き、聞くためにも
まだ消さないで、、、
僕は今まで感じたことがない強烈な好奇心に駆られて、すべての部屋をしっかり覗き見したくてたまらなかった。
なんて奴だ、と自分を軽蔑しながらも、どうしても見たかった。
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