ショウさん、信州人さんコメント有難うございます。
続きです。
カレーが出来ると美穂は運んできた皿を一つ手に取り、仏壇の前に置いた。
「久しぶりにみんな揃ってのカレーやな!篤、ゆっくり食えよ!」
「そうよ、ゆっくり噛んで食べるのよ!」
美穂の優しさと仏壇の前で笑う俺達を見て、親父さんもお袋さんも笑顔を取り戻していた。
「健二君、よかったら篤の部屋を見てくれないか。もし何か篤との思い出の物があれば持って帰って欲しい。」
「有難うございます。美穂、行こうか。」
「はい。」
俺達はカレーをお代わりし、食後のコーヒーを飲んでいると親父さんはそう言い、俺達は二人と一緒に篤の部屋に入った。
「いろいろ思う事があって…。捨てる事が出来なくてね…。馬鹿な子だったけど…。私達にとっては…。」
「捨てないで下さい!こっちに帰って来た時は必ず遊びに来ます。だから…。ずっとこのままで!」
「健二君…。美穂ちゃん…。有難う…。」
子を思う親の気持ちは何よりも強く、それをあらためて心に刻んでくれた二人に、俺達の思いをしっかりと伝えた。
「健二、見て!これ?」
「三人で撮った写真や!学校…!夏祭り…!花火大会…!おっ!海水浴もあるやん!美穂…水着やー!俺持ってないぜ!」
「健二の馬鹿!二人の前でなにはしゃいどるん!もー!おば様、叱って下さい!」
「二人を見てると昔を思い出すわ…。あ…篤も…そこに居るみたいで…。」
そんな昔を思い出していた俺達だが、四人とも笑顔でいっぱいだった。
「おば様、この写真を篤の側に置いて下さい。そして仲良し三人組の事をいつも思い出して下さい。」
「美穂ちゃん…。有難う…。本当に有難う…。」
夏祭りに三人で撮った写真。美穂が真ん中で篤と俺が美穂の顔にキスする真似をしている顔。三人の最高の笑顔が写っていた。
昔に戻った様な楽しい時間を過ごし、たくさんの写真を貰い、篤の実家を後にした。
「ちょっと部屋片付けるから健二は待ってて!勝手に部屋に来たらダメだからね!」
美穂の実家に戻ると美穂はすぐに綺麗に片付いているはずの2階の部屋に上がった。
その間に墓参りで篤の親父さんとお袋さんに逢った事を話し、二人に美穂の親父さんとお袋さんの思いを話したと伝えた。
「篤君のお父さんもお母さんは何度も家に訪ねて来られたけど、美穂があんな状態だったから…。逢うことは出来なかったの。二人も辛い思いされて…。」
「篤の親父さんとお袋さん、お二人の気持ちが嬉しいって喜んでました。年明けには挨拶に来たいって言ってましたので。」
「そうか!何もかも健二君のおかげだよ!有難う!本当に有難う!」
「すべては美穂が頑張ったからです。美穂がみんなの幸せにしてくれているんです。美穂に感謝してます。」
二人は目頭を押さえながら笑顔で頷いていた。
「久しぶりだから、片付けたの。健二も部屋見たいでしょ?」
「何や、俺のために片付けたんか?そやな、久しぶりに美穂の部屋見てやるか!」
「見せてあげるんだからね!」
美穂はちょっとすねた顔を見せたが、その顔が愛しくて堪らなかった。
「ほー!昔よりも綺麗な部屋やん!」
「失礼ね!健二と篤がいつも部屋を散らかしてたんやろ!いつも掃除大変やったんよ!」
「そうやったな!久しぶりに美穂のアルバム見たいな。」
「いいよ。けど、昔のままよ。」
美穂はそう言い、棚の扉を開けてアルバムを取り出した。
「懐かしいなー!昔、篤と三人で見たよな!三人で撮った写真も…。懐かしいわ…。」
アルバムには抜き取られていたところに三人で写った写真が戻されていて、俺は込み上げる涙を抑えるきれなかった。
「健二!何泣いてるん?そんなに懐かしかったん?」
「そやな、美穂の幼稚園の時の顔が面白過ぎて、笑い泣きや!」
「健二…。三人揃ったよ…。有難う…。」
美穂は声を詰まらせそう言い、俺の背中に抱き着き顔を埋めた。
両親達との楽しい時間、二人での初詣、良太との新年会。楽しかった正月もあっという間に過ぎ、俺と美穂は実家を後にした。
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