信州人さん、コメント有難うございます。
続きです。
久しぶりに見る仲間達の歓迎ぶりに俺も美穂も楽しい話しの輪の中心に居た。
「健二!久しぶりやな!元気そうで安心したわ!」
「良太!やってくれたな!有難う!みんな美穂を暖かく迎えてくれて…!」
「俺達仲間やないか!それにしても…美穂綺麗や…!昔の輝いていた美穂や!お前も頑張ったな!夢叶えられてよかったな!」
幹事の良太は高校三年と時から仲良くなり、ケガで春には部活を引退した良太と失恋で二人と距離を置いた俺。互いに目的を失った者同士、何故か気が合った。
卒業後も篤と美穂の事を教えてくれたのは良太だった。
「この同窓会も年々参加者が少なくなってな。みんな篤の事引きずってんね。美穂の人生台なしにした事も許せんしな。篤のせいで健二も町から離れて行ったとかな。毎年そんな同窓会やったんや。」
「そうやったんや!で、何で美穂の事わかったんや!」
「普通同窓会に嫁さん連れて来るなんてありえんやろ!しかも名前が美穂って!まあ、念のため確認取ったけどな!」
「確認って…!誰に?」
「お前の親父さんや!」
「親父!あの野郎そんな事何も言わんかったぞ!」
「俺が聞いた事は内緒にしてくれって頼んだからな!美穂の事聞いたら嬉しそうに教えてくれたわ。今日の事は親父さんは知っとるんや!ええ親父さんやな!」
良太に親父との事を聞かされ、意外な親父の姿を嬉しく思った。
「それから大変やったわ!メンバー全員に電話で健二と美穂の事伝えてな。結果全員参加や!居酒屋に入りきれんから会場もここに変更してな!演出もみんなで考えてな、大変やったんだぞ!」
「良太…!有難う…!篤も…この仲間の輪に入れてやりたかったな…。」
「健二…お前…!篤の事…!」
「後で話すわ!みんなにもな!良太、有難う!」
「アホ!礼を言うのはこっちや!結婚式にはみんな行く気満々やからな!全員呼べよな!」
「わかってるわ!来ん奴おったら許さんで!」
良太に同窓会の裏話を聞かされ、俺と美穂がみんなから仲間として迎えられた事を本当に嬉しく思った。
まるで高校時代に戻った様に楽しい時間だった。みんな何から解放された様に笑顔がこぼれ、美穂の姿も輝いていた。
「みんなそのままでええから聞いてくれ!健二からみんなに話しがあるそうや!」
宴も終わりに近づいた時、良太の声にみんなから拍手と歓声が上がり、俺はマイクの前に立った。
「健二…!私も…側に居たい…!」
美穂は何かを察したのか、俺の側に駆け寄り強く手を握った。
「みんな今日はサプライズ有難う!俺達を暖かく迎えてくれて本当に有難う。もう一人暖かく迎えて欲しい奴がおるんや!篤や!馬鹿な奴で…先に逝った奴やけど…。あいつの事許してやって欲しいんや…!」
俺の言葉にみんな顔を臥せ、会場は静まりかえった。
「俺が交通事故にあった時…。篤が…。俺と美穂は篤に命を…。」
俺は美穂の手をしっかりと握り、事故の時の事すべてをみんなに話した。
「みんな引きづってるのはわかってる!でもみんな篤の事、心の片隅にこの仲間にって思ってるはずや!頼む!この通りや!」
俺がみんなに頭を下げ、美穂も泣きながら頭を下げると、みんなの啜り泣く声が聞こえた。
「みんなこの日が来る事を願ってたんやー!これで…仲間全員…!揃ったんやー!」
良太の一言が会場に響い後、篤の事を許し合えた仲間達の拍手と歓声が上がった。
「健二…!よかったね…!篤も…!」
「美穂…有難う…!美穂…!」
美穂は泣きじゃくりながら俺に抱き着き、俺も美穂を強く抱きしめた。
二次会はカラオケ店を貸し切り、深夜にお開きとなったが、仲間達はすべてに解放された晴々とした笑顔を見せていた。
「健二、今日は有難う。みんな本当に喜んでたわ。年末はずっとこっちにおるやろ?」
「年末年始は毎年帰省するわ。美穂にはまだ言ってないけ今日は篤の墓参りに行くつもりや。」
「そうか。帰る前にまた一杯やろうな!また連絡するわ。」
良太とそんな約束をして別れ、二人で美穂の実家に帰り、互いに温もりを感じ合いながら眠りに落ちた。
翌朝、ちょっと二日酔いだったが美穂に起こされた。
「健二、お風呂沸いてるから。それから朝ご飯よ。」
美穂の言葉に促され風呂に入り、朝ご飯のテーブルにつくと美穂は黒いワンピースに着替えて部屋に入ってきた。
「美穂…お前…。」
「朝ご飯食べたら行こうね。篤のお墓参り。」
美穂の笑顔に俺は堪えきれず、朝ご飯はちょっとしょっぱかった。
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