年末になり仕事納めも終わり家に帰ると美穂はクローゼットの前で服を見ていた。
「美穂、どうした?」
「同窓会に着て行く服だけど…。私、あまり服持ってないから…。これでいいかな?」
「ええ機会や、これから買いに行こう!あんまり高い物は買えんけどな!」
「け…健二、有難う。」
どんどん女らしくなっていく美穂の姿に相応しい服をと思い、喜ぶ美穂とショッピングセンターに行き服や下着を買い揃えた。
「健二、どうかな…?」
「良く似合ってるよ。後ろ見せて!」
帰省の日の朝、美穂は先日買った服に着替え、照れ臭そうに俺の前にワンピース姿を見せた。
「ええケツやな!惚れ惚れするわ!そんな姿で街歩いたらナンパされるかもな!気をつけろや!」
「馬鹿…変態!私は…健二だけのものよ…!健二…有難う。」
美穂は俺に抱き着き、目を潤ませ唇を重ねてきた。
年末の渋滞に巻き込まれたが、無事に家に着くと親父とお袋が温かく迎えてくれた。
「み…美穂ちゃん、また女らしくなって…。昔の美穂ちゃん見てるみたい!」
「昔って!美穂はもう高校生じゃないぜ!まあべっぴんさんには間違いないけどな!親父、目がエロいで!」
「け…健二…!お…お前!馬鹿野郎が!」
「まあまあ、それだけ美穂ちゃんが綺麗だって事よ。美穂ちゃん、馬鹿な男達でごめんなさいね。」
「はい。でも、嬉しいです。本当に嬉しいんです…。何もかもが…!有難うございます。」
その言葉に親父もお袋も優しい笑顔で美穂を見ていた。
ごく普通、いや普通以上に暖かい家族との一時を過ごし、同窓会後は美穂の実家に泊まる事を告げ実家を後にした。
「美穂…。お前…。」「昔の美穂みたい…。」
美穂の実家でも親父さんとお袋さんは俺の両親と同じ事を言い、俺達を暖かく迎えてくれた。
親父さんとお袋さんとも暖かい家族との一時を過ごし、俺達はタクシーで同窓会の会場に向かった。
「あれっ!居酒屋って言ってなかった?」
「何か知らんけど、会場が変更になったって幹事から電話あってな!」
「そうなんだ…。」
ハガキを出して一週間後に幹事の良太から電話があり、『会場がホテルに変更になった』と聞かされ、俺は美穂には内緒にしていた。
「美穂!ハンカチたくさん持って来たからな。我慢せんでええからな!」
「有難う。だ…大丈夫よ…。健二…、手…離さんでね!ずっとよ…お願いだからね…!」
美穂は少し緊張した顔で俺の手を強く握り会場のホテルに入った。
「中川健二様、奥様の美穂様ですね。どうぞこちらへ。」
会場の入り口に着くと何故かホテルの従業員と思われる女性に案内され、大きな扉の前に立たされた。
「扉が開いたら立ち止まらずゆっくり中へお入り下さい。」
『中川様ご夫婦到着されました。』
その女性が胸元のマイクの様な物に囁くと扉がゆっくりと開いた。
「健二…。何…眩しい…。キャッ!」
『パンッ!パンッ…パンッ…パンッ!』
俺達は部屋の中からのスポットライトを浴び、その眩しさに驚いた瞬間、物凄い数のクラッカーが弾けた。
「健二、美穂結婚おめでとう!健二ー!美穂ー!おめでとうー!」
クラッカーシャワーを浴びながら照明が落とされた部屋の中に入ると、俺達への祝福の歓声が上がり、俺は美穂を抱き寄せ手を挙げて応えた。
「美穂ー!美穂…!美穂ー!美穂ー!」
部屋の明かりが点き周りの奴らの顔がはっきりと見えると、美穂の周りに女性達が集まってきた。
「みんな待っててくれたんだな!さあ、行っておいで!」「う…うん!」
俺が美穂の背中を押すと、美穂は仲間達の渦に飲み込まれ、みんなの歓声が響いた。
「心配したよ!」「元気でよかった!」「逢いたかったよ」「美穂ー!」
「みんな…有難う!有難う!有難う!」
みんな美穂の元気な姿に安心し、優しい声を掛け、泣きじゃくる美穂を抱きしめていた。
俺も昔の仲間に囲まれ、もみくちゃにされながら暖かい祝福を受けた。
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