美穂の両親に結婚の承諾得た俺達は、美穂と金曜日に休みを取り、俺の実家に行く事を決めた。
「金曜日やけど、二人に合わせたい人がおるんや。大事な話しもあるから。」
「まあ、久しぶりに連絡くれたと思ったら…。お父さんに時間作る様に言っておくわ。気をつけて帰って来るのよ。」
夜に電話を入れるとお袋は何かを察したのか、嬉しそうに電話を切った。
金曜日は朝早くに家を出て、昼前に実家に着く予定で車を走らせた。
「お父さんとお母さん…。私達の事…許してくれるかな…。」
美穂は不安げな顔を見せ、俺の手を握った。
「二人とも美穂の事知ってるし、久々に元気な顔見て喜ぶやろ!けどな、美穂の事は包み隠さず話しはする。思い出したくなかったらその時は席外してええから。時間掛かってもええから、必ず説得する。」
「健二…。有難う…。」
美穂は涙を溢れさせ、俺の手を力強く握った。
「ただいま。無事に着いたで!」
「お帰り。彼女さんは?」
お袋は玄関先でいきなりそう言い俺の後ろを見た。
「お久しぶりです。山口美穂です。」
「えっ?み…美穂ちゃんって?」
「お袋覚えてるよな?高校の同級生の美穂や。」
お袋は久しぶりに見る美穂に驚きながら頷いた。
「元気にしてた?二人はどこで?お父さんお母さんは元気?」
「お袋!後でゆっくり話すから。親父は?」
「ご…ごめんね。私ったら…。お父さん和室で待ってるわ。さあ、上がって。」
お袋は驚きながらも笑顔を見せ、俺は美穂の手を握り、親父の待つ和室に入った。
「久しぶりやの。まあ座れ。」
親父の言葉にちょっと緊張したが、美穂を先に座らせ、俺は親父の前に正座で座った。
「紹介します。今付き合ってる山口美穂さんです。親父忘れたかも知れんけど、高校時代の同期生の美穂です。」
「お久しぶりです。山口美穂です。」
親父に美穂を紹介すると美穂は深々と頭を下げた。
「覚えてますよ。よく家に遊びに来てた美穂さんですね。」
「私も覚えてるわよ。そんなにかしこまらなくてもいいのよ。」
お袋はコーヒーをテーブルに置き、親父の横に座り、笑顔を見せた。
「二人に大事な話しがあるんや。その前に二人に美穂の事を聞いて欲しい。美穂…。」
美穂に席を外させ様と美穂を見ると、美穂は俺の手を握りしめ二人に頭を下げていた。
俺は二人に美穂の過去をすべて話した。最後に子供が産めない身体かも知れないと。
「美穂さん…。辛かったね…。でも…良く頑張ったね…。」
お袋はハンカチで涙を拭いながら美穂に優しい言葉をかけてくれた。
「美穂と結婚します。俺達の事を認めて下さい。お願いします。」
無言で腕を組む親父に頭を下げると、美穂も深々と頭を下げた。
「健二!こっちに来い!」
しばらく沈黙の間が空き、親父は立ち上がり和室の扉を開け、縁側に立った。
言われた通り縁側に立つといきなり親父の廻し蹴りが側頭部に跳んできた。
「キャッー!け…健二ー!嫌ー!」
美穂の叫び声が響く中、廻し蹴りは寸止めで止まり、鋭い風圧が俺を襲ったが俺は動じる事なく親父の目を見た。
「覚悟は出来てる様だな。高校時代は逃げたお前だが…。一人前になりやがって!座れ!」
親父は笑顔を見せると美穂は俺にかけより、二人の前に座った。
「お前達の覚悟は受け止めた。過去の事など関係ない。これからを二人一緒に幸せになるんだ。美穂さん、健二をよろしく頼みます。」
「健二、美穂さん…よかったね…。二人はやっと結ばれたのね…。よかった…。」
親父はゆっくりと頭を下げ、お袋も泣きながら頭を下げた。
「お父さんお母さん、有難うございます…。本当に有難うございます…。」
美穂は泣きじゃくり、お袋はそんな美穂を優しく抱きしめてくれた。
「高校の時にね、健二ったら失恋して少し荒れたのよ。お父さんも見るに見兼ねて『渇』入れたの。さっきみたいにね。健二ったら逃げ出してね。笑ったわ。」
お袋が昔話をしながら笑うと親父も笑い出し、美穂の顔にも笑みがこぼれた。
それからこれからの事を話し、用意してきた婚姻届に署名して貰った俺達は市役所に行き、書類を準備し美穂の家に向かった。
「お父さんお母さん、俺の親も美穂との結婚を認めてくれました。帰ってから婚姻届を出します。」
「健二君…有難う…。」
「美穂…よかったね…。」
二人は泣きながらそう言い、美穂を抱きしめていた。
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