あや姉たちが帰ってきて2週間が経った。
僕と凛太郎はずいぶん仲良くなり、先日からはライダーになりきる凛太郎に何度も退治されるはめになっていた。
凛太郎の中ではヒロインはあや姉で『お姫さま(あや姉)に悪さをする敵(僕)をやっつける』という設定らしい。
今日も見事にやられた僕だったが、遊び終わったあとに凛太郎がこっそり話しかけてきた。
「ゆうと…おれ、もっとつよくなってね、ママをなかせる人をやっつけるんだよ」
「えっ…ママ、泣いてるの?」
ドクンッと心臓が動く。
「ううん、今はないてないけど、前のおうちではときどきないてた。
…パパとケンカして、ないてたの見たよ」
「パパとケンカして…」
『大きな声じゃ言えないけど、旦那さん浮気してたんですって!』
拳にグッと力が入る。
「ねぇ、ゆうと…ゆうとはママにひどいことしないよね?」
「えっ…」
「おれ、まだちっちゃいから…うまくできなくて。
ゆうとはおとなだから、ママのことまもってあげられるよね?」
泣きそうな顔をしながら凛太郎は口を尖らせている。
凛太郎は、前の家で何を見たんだろう。
誰の、どんな言葉を聞いたんだろう。
きっとこの小さな胸は、ピッピの時の僕以上に傷ついており、悔しい思いを詰まらせている。
僕までも泣きそうになり、思わず凛太郎を抱き寄せた。
「…大丈夫、大丈夫だよ。ママが泣いてたら、僕が助けに行くから…」
「うん。
…でも、ゆうとよわっちいからなぁ~
おとなのくせに、いつもおれにたいじされちゃうからなぁ~」
本気で困ったような言い方をする凛太郎が可笑しかったが、
「じゃあ、ふたりでママのことを守ってあげよう」
と、僕らは男同士の約束を交わしたのだった。
つづく
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