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ウレシいです(*^^*)
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「大原綾乃、33歳!本日より出戻って参りました!」
真面目な顔でビシッと敬礼したのち、ふにゃっと目尻を下げて笑う。
昔から変わらないあや姉の笑い方だ。
「出戻りだなんて綾ちゃん…なんか困ったことがあったら、遠慮なくおばちゃんに言うのよ」
「えへへ…ありがとね、おばちゃん」
「なんか男手が必要なら…頼りないかもだけどこの子も居るから!こき使ってやって!!」
バシッと母親が僕の背中を叩き、思わずよろめく。
「いやいやいや…侑人がこんなに大人になってるとは思わなかったよ。最後に会ったとき、私よりも背低かったよね?」
「高校入ってから、伸びたから…」
「むふふっ…声変わりもしてなかったもんね。街ですれ違っても絶対わかんない!さっきも一瞬誰?ってなったもん」
可笑しそうに、懐かしむように、あや姉は僕の顔をまじまじと見ながら笑う。
無性に照れ臭くなり俯いてしまうと
「何だよ~照れるなよぉ。お姉さんにもっとお顔見せてごら~ん」
あや姉の手が僕の両頬に触れ、間近で目があった。
「本当、大人になったね」
綺麗な瞳から目が離せないでいると、またふにゃっと目尻が下がる。
彼女のことは心の奥底にしまったはずなのに。
僕の恋心はいとも容易く再燃してしまった。
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僕の家とあや姉の家は隣同士で、幸運なことに僕の部屋とあや姉の部屋は向かい合う形となっていた。
小学生の頃は朝一番に自分の部屋の窓を開けて、あや姉に「おはよー!」と言うことが日課だった。
あや姉がニコッと手を降ってくれるだけで、算数のテストがある日も、マラソンがある日も、友達と喧嘩した日も、何だか頑張れそうな気がしていた。
あや姉がお嫁に行ってしまったあと、その部屋は空き部屋となった。
おはようと声をかけてもあの笑顔はどこにもなく、ひどく虚しい気持ちに襲われていた。
あれからいつもカーテンは閉めるようになったが、今日からあや姉はあの部屋に住むんだろうか。
それならば、久しぶりにカーテンを開けてみようか。
…なんて、我ながらストーカーばりの気味の悪い思考を巡らせていることに、思わず苦笑してしまう。
「凛太郎がね…あ、もうすぐ5歳になる息子なんだけど。引っ越しするの絶対嫌がるって思ったんだけど、平気そうな顔してるんだよね」
我が家の居間でお茶をすすりながら、あや姉がつぶやく。
「たぶん我慢してるんだよ。こっちに友達いないし、寂しいに決まってる。
だから…もし侑人が暇なときで良いんだけど、凛太郎の遊び相手をしてくれたら…すごく、ありがたいです…」
「あや姉…」
『僕で良ければいつでも!!』と言うよりも早く、母親が「いつでも使ってやって!!」と大きな声で返事をする。
「…そういうことなんで、いつでも相手になります」
はにかみながらそう返事をすると、あや姉は「ありがとー!!」と僕に抱きつきながらお礼を言う。
髪の毛の甘い香りが鼻をかすめ、クラクラと眩暈がしそうだった。
つづく
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