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僕はもう子どもじゃない。
自分の力で、あや姉のところへ行くことができる。
…ズルッ!
「あっ…」
「え?」
踏み切った左足が窓の桟に着地した瞬間、思いきり滑った。
「あっ!わ…わ!!」
「侑人!」
間一髪であや姉が僕を引っ張り、ドスンッと彼女に覆い被さるように落ちてしまった。
「いったぁ…」
「え……あぁー!!あや姉っ!ごめんっ!え、だ、大丈夫?ごめんね、重かったよね!うわー!ご、ごめん~本当に…」
彼女を下敷きにしてしまい、慌てながら僕は必死で謝った。
「……信じらんない」
「えっ…」
「あ、あんな…決めゼリフ言っといて…最後滑って落ちそうになるとか…っふふ…
か、カッコ悪~~ふ…っくく…」
「あ、あや姉…」
頭をガーンと殴られたようになるが、あや姉はぷるぷる震えながら笑っている。
「ふっ…ふ、普通…バシッと決める…とこなのに…ふっ…ふふ…あはっ…ははっ…だ、台無しじゃん~~」
「そっ、そんな笑わないでよぉ!」
カーッと赤面しながら言うが、あや姉はツボに入ったようでヒィヒィと苦しそうに笑っていた。
「あーっ…もう…何の涙か分かんなくなったじゃん」
やっと身体を起こし、涙を拭きながらあや姉は言った。
「はぁ~~ごめんね、侑人にまで心配かけちゃったね」
うまく伝えられるだろうか。
「…僕は、あや姉が頑張ってるのを…知ってる。
凛太郎も、あや姉が頑張ってる姿を見てきてる。
だから、僕たちはあや姉のことを守りたいって、元気になって欲しいって…思うんだよ」
ちゃんと、彼女に届くだろうか。
「僕たちだけじゃない。
おじさんやおばさんだって、うちの親だって…
誰もあや姉のこと可哀想だからなんて思ってない。
頑張ってるの知ってるから、心配だし、力になりたいし…な、何とかしたいって…思うんじゃないか…」
「侑人…」
「確かに…中には同情とか憐れみ…とか、そんな奴もいるかもしれないけど、でも…でもそいつらはあや姉のこと、ちゃんと知らない人たちだよ。
でも…僕や凛太郎たちはみんな、あや姉のことが大好きなんだよ!
だから…お願いだから……心配させてよ。
元気かな?…泣いてないかな?って思わせてよ。
自分にできることはないかなって…僕にも…思わせて…ほし…」
喉の奥が熱い。
どうしよう、涙が出そうだ。
耐えきれずポロッと涙が零れた瞬間、あや姉が僕の胸元に勢いよく飛び込んできた。
「あ…」
「っ……うぅ…ぐすっ…ひっ…ひく…ぅあぁぁ…」
泣きじゃくる彼女の背中を、ゆっくりとさする。
昔この人にしてもらったように、僕は上手に慰められないかもしれない。
だけど、あや姉の辛さや苦しさが少しでも外に出ていくことを祈りながら、僕は彼女の熱くなった背中をさすり続けた。
つづく
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