グループ”女豹“を追え その11
俺の作戦は失敗した。
彼女の方から呆れて貰うシナリオは、あっさりと崩れた。
何故か、もっと深みにはまった様な気がして来た。
俺は彼女を説得した。
「由紀さ、あ、いや、橘さん」
「そもそも俺は警〇官ですよ!」
由紀「だから?(泣)」
「あ、いや~、だからって」
由紀「だから何なの?」
「橘さん的にも不味くはないんですか?」
由紀「どんな事?」
「社内のコンプライアンス遵守に関してですね」
「え~、その、何と申しますか」
由紀「組織での示しが付かないって事?」
「そうそう!正にそれ」
由紀「そんなもの、最初から無いも同然よ」
「はぁっ?」
由紀「私が良いと言ったら良いの!」
「いや、そちらが良くてもですね、こちらの都合と云うものが有りまして」
由紀「小野寺さんとは話が付いているわよ」
「はあ?」
由紀「今回の不始末はこれで帳消しにって、提案された」
「不始末?俺の?」
由紀「そうよ!」
「ちょ、ちょっと待ってくださいね」
俺は、あの人達に利用されたのか?
警〇庁と法〇省の情報戦の槍玉に挙げられた?
俺はトカゲの尻尾だったのか?
由紀「貴方は彼らに利用されたのね」
「橘さんもその事は知っていたと?」
由紀「当然でしょ」
「だから彼女らを差し向けた」
「俺だけが何も知らなかった」
由紀「サラリーマンだもの」
「しょうがないわ」
俺は頭に来た。
そりゃあ俺は下っ端の兵隊だ。
だが、こんな酷い扱いまでは受け入れられない。
由紀「もう、開き直った方がいいんじゃないかな?」
俺は脱力した。
そして、開き直った。
「俺、帰ります」
由紀「えっ?、何で?」
「全部、ぶちまけて辞表を叩き付けてやる!」
由紀「それは大人の対応じゃないわ」
「いいんです」
「俺は辞めてやる」
由紀「それは私が許さない」
「貴方と縁が切れちゃうから」
「そりゃあ俺が警〇官じゃなくなったら意味が無いですもんね」
由紀「逆よ」
「はぁ?」
由紀「貴方が一般人になったら迷惑は掛けられない」
「それが裏社会の暗黙のルール」
「それじゃあ、何で俺なんかとデートまでして・・」
と言い掛けたところで彼女は言った。
由紀「貴方を失いたくは無いから」
「えっ?」
由紀「貴方が好きなの!」
「一目惚れ!」
俺は彼女に求愛された。
頭が真っ白になった。
由紀「なんか、 云ってよ!」
「・・・・・」
由紀「そりゃあ、そうよね」
「私みたいに薄汚れた女なん、て・・・」
「んんっ?」
俺は彼女にいきなりキスをした。
彼女は眼を丸くして驚いていたが、その後ゆっくりと眼を瞑った。
俺は彼女をきつく抱きしめる。
すると、彼女も俺を抱きしめてくれた。
暫くして、俺は彼女の唇から離れた。
すると彼女が怒った顔で言った。
由紀「私、ファーストキスだったんだよ」
「えええ~~~?」
俺はびっくりした。
あらゆる意味で。
由紀「そんなにびっくりしなくてもいいじゃない」
「そりゃあ、色んな男に身体を許して来たけど」
「唇だけは、絶っ、対に許さなかった」
「大切な人の為に」
彼女が裸の心をさらけ出してくれた。
俺も心の殻を破らなければ男が廃る。
「いいんですね、由紀さん!」
由紀「当然よ!」
俺は彼女の心と身体を受け容れた。
彼女は無防備でそれに応えてくれた。
つづく
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