グループ”女豹“を追え その9
俺は黒い服の男に付いて行く。
美冬嬢はママに見られていると言っていた。
すると、敵の首領は女なのか?
男はビルの最上階にある普通のドアの前で立ち止まった。
そして、インターホン越しに数秒間会話をすると、カチャっとロックの外れる音がした。
男はドアを開けて、どうぞと言う。
俺は満を持してその中に入ると、中は煌びやかな装飾が施され、高そうな調度品に囲まれた豪華な空間であった。
奥の重厚なデスクには一人の女性が座ってこちらを見ている。
「さあ、どうぞ」
と、俺はその女性に促され部屋の中央に進んだ。
彼女は椅子から立ってデスクを周り、俺の目の前まで来た。
「はじめまして、 橘由紀と申します」
彼女は、そう言って俺に深々と頭を下げた。
そして
「どうぞ、 こちらにお座りになって」
と言って、部屋中央の対面したソファーの上座に俺を促した。
俺は黙ってソファーに座った。
彼女も向こう側に座る。
二人は暫く沈黙した後、俺が口を開いた。
「何が目的ですか?」
由紀「まぁ、そんな怖い顔をなさらないでください」
「この顔は生まれつきですから」
その言葉を聞いて、彼女は、クスっと笑った。
「何が可笑しいんです?」
由紀「あっ、ごめんなさい。いえ、あのね」
「あの、 美冬さんの言っていた通りだなって」
「美冬さんが?」
由紀「そう、 とても面白くて素敵な方だって」
「その面白い俺にどんな用があるんですか?」
由紀「あの、少しばかり私事を言ってよろしいかしら?」
「ど、どうぞ」
そして彼女は、現在の組織の状況を話始めた。
対外的、経済的、更に敵対する組織の事。
そんな色々な話の最後に、後継者問題について彼女が語り始めた。
由紀「私、来年から組織の事は全て、美冬さんに任せようと思っているの」
「でね、次は私自身の後継者を作らなきゃなぁ~って思っています」
「はっ、 はあ」
由紀「私は今まで、色々な男性を見て来たわ」
「は~、 はい」
由紀「政治家の方、官僚の方、財界の方」
「果ては有名な芸能人やスポーツ選手の方々」
「皆さん、素晴らしい方々でしたけれども、何か違う様な気がするの」
「そこに貴方が登場した!」
「おっ、俺、 ですか?」
由紀「そう! 貴方!」
「貴方のその、無鉄砲な程の行動力とワイルドなルックス」
要するに馬鹿ってことかよ!
由紀「貴方こそ、ピッタリだと思った」
「いえ、貴方じゃなきゃ駄目だった」
「何を、 ですか?」
由紀「私の赤ちゃんのパパ」
「はぁ、貴女の赤ちゃんのパパねぇ~」
「貴女の?」
「・・・・・」
「って、 パパ? はぁ~~~?」
由紀「どうかしら?」
「いや、あの、 どうかしらって言われても、どうすればいいんだか」
由紀「貴方は私に精子を提供してくれれば、それでいいの」
「あ、ぁいや、その、それでいいのって?」
由紀「簡単でしょ?」
「いや、あの、簡単とか、簡単じゃないとか、そういう問題じゃなくてですね」
由紀「嫌なの?」
「ですから、嫌とか、嫌じゃないとか」
由紀「う~ん、もう、はっきりしなさい!」
「はっ、はい!!」
これは困った。
いきなりの想定外の展開に、俺は大混乱した。
俺は暫く黙ってしまった。
これには彼女も困惑した。
自分の誘いに悩まれるとは、彼女にとっても想定外であったのだ。
しかし彼女も反省した。
よくよく考えれば普段の冷静沈着な自分からは、あり得ない様な言葉の言い回しでもある。
彼女はもっと、戦略的に攻めようと考えを改めた。
「私をよく見て!」
彼女は、スッと立ち上がって、いきなり赤のスカートを脱ぎ始める。
そして白のブラウスのボタンを全て外して、アイボリーホワイトのブラを着けた美しい胸をさらけ出した。
正に完璧な女性であった。
小さな顔に長くて細い腕と脚。
髪はショートで色は濃い目のブラウンである。
そのパーツが全体で絶妙にバランスされて、一つの完成品と言っても過言ではないであろう。
女としての彼女が自信の塊である事は自然の成り行きかもしれない。
俺は眼を見張った。
そして、この美しい女性を前にして、ある疑問が湧いて来た。
「なんで俺なんですか?」
由紀「えっ、何でっていわれても・・・」
「とにかく、貴方じゃなきゃ駄目なの」
俺にそう言われて何故か彼女は困っている様だ。
これでは解決策は見つからない。
彼女も言うべき言葉が見つからない。
こんな事は初めてであった。
正に思考と感情が入り乱れている状態だ。
こんな状態はプライドの高い彼女には許せなかった。
由紀「じゃあ、どうしろって言うの?」
遂に彼女はキレた。
論理的な思考で世の中を渡って来た彼女にとっては、本当に初めての経験であった。
彼女の女の部分が剥き出しになった。
つづく
※元投稿はこちら >>