事件も聞かない日が数日続き村は平和だった。
もちろんいいことなのだがあきおにはどこか寂しかった。それ以来会わなくなったからだ。
あきお「いらんことしたかなぁ……」
そんなことを考えながらいつもの釣り場に足を運ぶ。
あきお「さて、今日はなにしようかなー」
カバンを開け中身をあさりながらブツブツ……
女「まったく、お前さんの優先順位はいったいなんじゃ?」
あきお「ふわぉ!?」
耳元に吐息といっしょに突然聞こえた声に驚き変な声をあげた。
女「あっはははは、なんじゃその声わ(笑)」
腹を抱えゲラゲラ笑う相変わらず綺麗な裸を晒す女がいた。
あきお「な、なにするんですかっ」
恥ずかしさに顔を赤くしながらもあきおは数日ぶりに女に会えた嬉しさがかくせなかった。
女「ん?儂は声掛けただけじゃないか。」
あきおは女に服を羽織らせた。
女「ふふ、儂の全てを見とるくせにあいもかわらずじゃの?今日は飲まぬのか?」
あきおはクーラーBOXからとりだし女に手渡した。
突然現れ、服を羽織らせ、いっしょに酒をあける。いつもどうりだった。
あきお「あれからなにしてたんですか?話も聞かなくなって……」
女「事件がないのはお前さんらにとって良いことではないのか?」
あきお「いや、そうなんですが……」
女「たまたまちょうど良さげなカモがいなかっただけじゃよ。見境なしにやっていては返り討ちにあいかねんからの。それに」
あきお「?」
女「お前さんのじゃないと儂が満足できぬからの♪」
あきお「はは(棒読み)」
女が機嫌よさげに酒を口にする横顔がとくに好きだった。
すると髪留めが変わっていることに気づいた。
あきお「あ、付けてくれたんですね。」
女「せっかくもらったからの。」
あきおと女がそんなやりとりをしているのを遠目から見て急ぎ足で戻る影があった。
女「で、お前さんの優先順位はなんじゃ?」
あきお「え……釣りが1番ですかねー」
女「儂に会いに来たんじゃなかったのか?ん?」
例のいたずらな顔にほろ酔いが加わりいつもにまして色気を感じとれた。
パァン……
女「ぎゃっ……」
女が叫び倒れた。
音がした方へ振り返ると猟銃や斧、縄などを持ち物々しい雰囲気の村人達がいた。
あきお「え……な……」
言葉にならないあきお。
女「ぐぅ……」
あきお「だ、大丈夫ですか!?」
女を抱き上げ焦る。
村人達「離れろ!まずはそいつを殺しておめぇにはあとから話をきかせてもらう!
みんなまずは女だけだ。こいつは生け捕りだっ」
村人達「さっきの会話を聞かせてもらった。まさかおめぇが関わってたとは意外だったよ。はやく言う通りにしろ!」
じりじりと構えたまま近寄ってくる。
あきおは言われるも女を抱える手に力が入る。
女「……ふ、気を許しすぎたか。巻き込んですまぬの……」
あきお「そんなっ……く、あなた達が元の原因なのわかってますか!?」
あきおは村人に向かい叫んだ。が、
村人「聞く耳持たん。まずはそいつを逃がすわけにはいかん。」
もはや逃げ場もなかった。
すると
女「……あきお、息を止めろ」
あきお「え……わっ!」
女はあきおを引っ張り海に引きずり込んだ。
村人「なっ、うてーうてー」
銃声が響く。
あきお「ごぼっごぼごぼ」
あきおは女に言われるも息が続かず意識を失った。
女は傷を負いながらも必死であきおを引っ張り
泳いだ。
そして暫くし海岸にあがる。
女「はぁ……はぁ……はぁ……あきお……」
あきおの顔を叩き呼びかけた。
あきお「ごほっ、げほっ、はぁ……はぁ……」
女「すまなかった……儂が一緒にいると迷惑をかける。儂は独りになるべきじゃ」
女は立ち去ろうとしたときあきおは必死で声を出した。
あきお「ま……待ってっ……」
力の入らないからだをどうにか起こした。
あきお「まって……村には戻れないけどあそこに執着ないなら俺のとこでいっしょに暮らしてください……ちゃんと毎日海に連れていくしご飯もつくるし……それに……」
女「……」
あきお「あの……やめれないなら漁師のことも我慢しますから……」
女「……ふ、阿呆が。儂をなんじゃと思っておる。」
あきお「す……すみません……。でも……」
女「……この格好ではいかんのであろう?ここで待っておる。お前さんがまた迎えにくるのを。」
女はそう言い残し海に消えていった。それを見届け力が抜け再び気を失った。
翌日を目を覚ましあきおは疲れも気にせずなるだけ急いで帰った。
貴重品は運良く身につけていたため家にも帰れたが荷物はほぼなくなった。
あきお「車……あるかな」
とりにいくか迷ったが置きっぱなしにはしないほうがいいと思い夜な夜な……タクシーで行くと無事だった。
あきおはすぐ離れるよいにだけ伝えタクシーを降り夜逃げするかのように車に飛び乗り村をでた。
女を迎える準備を整え最後の海岸に向かった。
あきお「真凪!!」
海に向かって呼ぶ。
真凪「……煩いぞ?あきお」
やはり背後から耳元に吐息といっしょにかかる言葉。
あきおは振り返り女に上着を着せた。
あきお「真凪っ。」
待ちわびたかのように女を抱きしめる。
真凪「ふふ、これでお前さんが毎日相手してくれるんじゃの?」
あきおは普段の生活にもどり、女はあきおといっしょになることにしたのだ。
いや、普段以上に楽しく過ごし村での出来事も世間には広まることなく日々を満喫していった。
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