その36
翌朝、すんなり外泊できたので鈴谷さんの話は何だったんだろかと考えながら、松葉杖を運転手に預けタクシーに乗り込み谷崎さんのアパートを目指した。
途中、百貨店に寄り道し、手土産を物色していると、地下の食料品売場で鈴谷さんを見つけた。病院の外で見るのは初めてだった。
以前の厚化粧とは違い、しっかりと流行の化粧をして、白いパンツルックにブルーの半袖ニットを着た鈴谷さんは、ずいぶん痩せて見えて、元々グラマラスだったのが強調され綺麗だった。
私は鈴谷さんに声をかけ、そこの綺麗なお嬢さん、今からデートですかと聞いた。
驚いた鈴谷さんは、しばらく私を見ながら無言になり、私が不審に思っていると、「今から谷崎さんの家に行くんです。一緒に行きましょう」と言った。
今度は私が驚き、とりあえず手土産を買うから、先に行っててと言うと鈴谷さんは「わかりました。またあとで」と言い、手を振って離れていった。
今日、私が谷崎さんの家に行くのを何故知っていたのた気になった。
もしかして、谷崎さんと鈴谷さんは、また仲良くなったりしているのかと考えながら松葉杖を片手に歩いていた。 つづく
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