その15
私は、着替え終えるとロビーを出たところでタクシーを捕まえ、運転手に行き先を伝えた。
今日は、格好悪いのと目立つため、先生から特別に許可をもらい車椅子を止め、松葉杖にしてもらった。ただし、無理は絶対にしない約束で。
タクシーが山道を降りる途中、私が転倒した現場を通りかかったが、その景色がずいぶん懐かしく思えた。
運転手から、「お客さん、退院?ずいぶん嬉しそうですね」と言われ、初めて自分の顔が綻びている事に気付いた。
山の麓の駅前から、15分程走ると谷崎さんのアパートが見えたため電話をすると、すぐに電話に出て、「ごめんなさい急用があって、今戻ったばかりなので、こちらに来て家の中で待ってもらっていいですか?」と言われた。
私はタクシーを降り、アパートの前まで行くと谷崎さんが玄関の前で待っていてくれた。
部屋の中に案内され、ソファに座って出されたお茶を飲んでいると「これ部屋着なので着替えたいの。いいですか?時間通り来て下さったのに、待たせてごめんなさい。」と谷崎さんが言い、私の返事を待たずに奥の部屋に入り襖を閉めた。
私は、部屋の中を見渡していたがモダンな家具を揃えた洒落た部屋に感心していた。更に見渡していると、壁にベネチアンマスクが3枚飾られているのが見えた。マスクを間近に見ようと立ち上がると、閉められた襖が少し開いており、谷崎さんが黒の上下の下着にガーターベルトを付け、ストッキングを履こうとしているのが見えた。着替える谷崎さんを見て私は欲情し、勃起していた。 つづく
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