《45》
美穂は震災直後に高校を卒業した18歳。
親族は全員亡くなって天涯孤独となった。
震災で就職先がダメになってしまい、就職は出来なかった。
出来る状態では無いはずだ。
行政の保護で生活を仮設住宅で送っていたが、俺に逢いに来てくれた。
俺は毎日仕事が終わるとイソイソと帰った。
女の誘いは全て断った。
こんな事は今まで無かった。
何故かは分からない。
ただ、美穂を1人にしたく無かった。
美穂も料理を作ったりしてくれた。
昼間は2人で出掛けたり、ドライブに行って過ごした。
夜は俺が帰るまで起きて待っていた。
帰った時に部屋の電気が点いて居ると駆け足で部屋に入った。
『ただいま』
「おかえりなさい。」
たったこれだけの事が嬉しいと思えた。
手は一切出していない。
こんな事も初めてだ。
2週間ほど経った時、唐突に
「明日、大阪に帰ります」
『え?なんで?』
「俺さんにも会えたし、そろそろ帰らなきゃ」
『え?まだ良いでしょ?』
「ダメですよ。」
『なんで?何がダメなの?』
「これ以上、迷惑は掛けられませんよ。」
『迷惑だなんて思ってないよ。楽しくて仕方ないくらいだし。』
「でも、ダメですよ。」
『なんで?』
「・・・辛いんです」
『何が?』
「あの時を笑える位、辛いんです。」
『だから、何が?』
「アナタを想うと、苦しいんです。」
『なんでさ』
「アナタを好きになって、ここまで来たけど一緒に居る時間が長くなると辛くなるの。」
『ずっと一緒に居れば良い。』
「ダメですよ。私はアナタに初めてを上げるつもりでずっと居るのに、アナタは何もしてこない。私の事をなんとも思ってないから。」
『そんな事無い。』
「そんな事ありますよ。そう思ったら終わりが来るのが怖いんです。それなら、私から終わらせようって」
『そんな事無い。そうじゃ無いんだよ。』
「そうじゃ無い?」
『そうじゃ無い。大事に想ってる女性を大切にするのは変じゃ無いでしょ』
「大事に想ってる?」
『うん。こんな気持ち初めてだけど、大事に想ってる。ずっと一緒に居たいと思ってる。』
「どうして?私はアナタに貰ってばかりで何も返せない。」
『返さなくて良い。ただ、一緒に居てくれればそれで良い。』
「でも・・・でも・・・」
『泣かないで。一緒に居るって言ってくれれば、それで良いから。』
「・・・うん・・・・・・うん・・一緒に居ても良いですか?」
『ずっと、このまま、ここに居て。』
「はい!」
『うんw良い返事だw』
何故、こんな気持ちになったのか分からない。
美穂だけは、どうしても一緒に居たいと思った。
他の女は、俺から離れる時に引き止めた事は一度もない。
愛美の時に1度足掻いただけだ。
ただ美穂とヤりたかった訳じゃない。
別にヤらなくても良かった。
後に松田聖子がビビビ婚で話題になった。
結局、彼女は別れたが、話題になった時に思った。
俺も『ビビビ』っと来たんだろう。
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