《40》
龍二達の住所はここから遠い。
探す事は出来そうも無い。
今は無事を祈るしか無い。
出がけに集合写真を撮った。
ヤクザも役に立つんだって世間に知らせる為らしい。
暴対法以降ヤクザは苦しいみたい。
昨日の娘がコッチに来た。
「ありがとうございました。」
『落ち着いたら逢いに来てよ。田舎県田舎市のナントカってお店で働いてるからさ。』
「絶対行きます。」
『その時は笑顔でねw』
「はい!」
『それじゃね。』
「あ・・・写真・・・撮っても・・・」
『あぁそうだね。良いよ。撮ろう。』
「ありがとうございます。」
『すいません。写真お願いします。』
「カメラはこれで」
ポラロイドカメラを撮ってくれる人に渡した。
並んで撮ろうとしたら
「せっかくだし、肩でも抱いて上げたら?」
「え?あ」
『どうする?w』
「お願いします。」
照れちゃってかわいいなw
肩を抱いて写真を撮った。
今風に言えばツーショット。
『それじゃ』
「はい。ありがとうございました。」
『うん。またね』
「うん!」
可愛い娘だったなぁ
顔がとかじゃなく雰囲気が良い。
イヤ、顔も可愛いかったけど、なんか優しい気持ちにしてくれる娘だった。
これ以上、西には行けないし、物資も半分以上使ったので、東に向かった。
しかし、道路が通れない事もあり、南に向かうしか無かった。
会社が有った方へ向かう事になった。
堺市の避難所に着いた。
大阪市内よりは被害が少ないが、それでも家が傾いてる。
瓦は相当量が落ちてしまっている。
早速炊き出しを始める。
大阪の避難所より人が多いようだ。
1日経ったからかな?
量を減らして、全員に行き渡った。
カイロは足りなったので、女子供を優先的に渡して、残ったものは年配者になんとか行き渡った。
前回の事も踏まえて、周りにに気付かれないように生理用品の必要可否を聞いて廻った。
余裕を持って渡したかったが、数が足りない。
あんなにいっぱい持ってきたのに。
どうする事も出来ないで落ち込んでたら、小学生くらいの女の子に心配された。
『足りなくてゴメンね』
「そんな事ない。嬉しかったよ。お股が赤いと恥ずかしいし。」
『それでもゴメンね。もっと持ってきて上げたかった。』
「そんな事ないよ。お兄ちゃんありがとう。」
俺より辛い事が有ったであろう小学生の女の子に励まされた。
しっかりしろ。俺
「大阪市内よりは良さそうだが、気になるヤツが何人か居た。監視する為にも今日は泊まっていく。お前はどうする?昔の職場に行ってみるか?」
『良いんですか?』
「その為に連れて来たんだし、行きたいだろ?」
『はい。』
「ただし、車は使えないから足は無いぞ。」
『歩いて行きます。』
「分かった。明日の10時迄に戻って来い。来なかったら置いていくぞ」
『分かりました。』
地図を確認して歩いて行く。
10キロくらいだ。
2時間くらいで行けるだろう。
出掛ける為の準備をしていたら隅の方でsexしてる奴らがいる。
それを周りの奴は気にも止めて居ない。
女も普通にアヘってる。
なんだこの異様な光景は。
みんな普通じゃない。
後で聞いた話では命の危機が迫ると子孫を残そうとするらしい。
生命の本能だそうだ。
だから、戦争直後は子供が多かった。
団塊世代と呼ばれている。
振り払うように出掛けた。
出発して直ぐに計算が甘かった事に気が付いた。
暗闇の中、瓦礫や道路の陥没、地割れも有る。通行止めの連続でまっすぐ進めない。
至る所に旗が立っていた。
旗の下はいらっしゃるそうだ。
3時間以上掛かって会社に着いた。
社員や家族が避難所として使ってる様だ。
知ってる人も何人か居たが肝心な顔が見えない。
電気が無い状態の暗闇だから探すのが大変だ。
やっとツトムさんを見つけた。
家族と一緒だった。
タケシは退社して実家を継いだらしく分からなかった。
真琴ちゃんは無事で家族と一緒に他の避難所に居るらしい。
マサキはダメだった。
真琴ちゃんの避難所を聴いて向かった。
マサキを失った真琴ちゃんも心配だが愛美も心配だった。
1時間程で着いた。
仮設の照明が有ったので直ぐに見つけられた。
俺の顔を見た途端、抱きついて泣かれた。
時間が無い。
早く愛美の事を聞きたかったが、すぐにはムリだ。
落ち着くまで待って教えてもらった。
「愛美は怪我をして病院に居るけど、人がいっぱいだし、治療もままならない見たい。」
『会う事は出来ないけど行って来る。』
「うん」
『マサキの事聞いたよ。残念だったけど、気を落とさないでね。』
「うん・・・うん」
2時間くらい掛かった。
ヤバい時間が無い。
病院に着いたが、予備電源だろうか?
少しだけ明るくなってる所もあるが、廊下のベンチや仮設ベットで寝てる人の周りは暗い。
あっちこっちで呻き声が聞こえる中、急いで愛美を探す。
辺りが明るくなり始めた頃
見つけた。
愛美だ。
怪我はしているようだが、眠っている。
良かった。
大事にならなくて。
数年ぶりに近付いて眺めていた。
胸が苦しい。
無事も確認出来たし、もう帰ろう。
二度と会う事は無いだろうけど。
病院を出ようとしたら、声を掛けられた。
「ひょっとして俺さんですか?」
『はい?』
「そうなんですね。愛美の母です。」
『いえ、違いますよ。人違いです。』
「遠い所大変でしたでしょう?」
『なんの事言ってるのか分かりませんが?』
「隠さなくて良いんですよ。愛美から写真を見せて貰って居ますから。」
『そうですか。娘さんを傷付けてしまって申し訳ありませんでした。』
「良いんですよ。何が有ったのか知りませんが、あなたとの事が有ってあの子は成長しました。」
『いえ、傷付けた事は事実ですし、そんな事が無くても彼女なら成長出来たはずです。』
「あなたも傷付いて苦しかったのね。もうあの子は大丈夫だから解放されたら?」
『苦しくなんてありませんし、僕は傷付いてなんか居ません。』
「もう泣かなくても良いのよ?」
泣いてる事に気が付かなかった。
苦しい。
気が付いたら涙が止まらない。
下を向いて泣いてたら抱き締められた。
「あなたも自由になりなさい。ステキな恋をして、あの子を見返してやりなさい。」
『ありがとうございます。』
「こんな大変な時に、無事を確認しに来てくれたのね。こちらこそ、ありがとう。」
『いえ・・・それじゃ時間が無いので行きます。』
「気を付けて帰ってね。」
『貴女も気を付けて下さい。話が出来て良かったです。』
急いで戻った。
瓦礫が有ったりで走る事が出来無いけど、とにかく急いだ。
なんとか時間までに間に合い、一緒に帰る事が出来た。
やっぱり強姦が有ったらしい。
そいつらはワゴン車で被災地に入り、避難所でレイプを繰り返して来たエセ被災者だった。
なんでも、彷徨ってる女の子に「安全な場所があるから一緒に行こう」と声を掛けて車で輪姦して回ってたらしい。
チャルメラのラーメンが一杯2500円とかぼったくりが横行していた。
それがタダで飯が食えると思い避難所に紛れ込んで居て見つかった。
震災被災者が4人増えた。
やっぱりヤクザこえーよw
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