《39》
3人で巡回に回った。
当然だと思うが寝られない人が何人もいる。
余震も続いてる。
本震を味わって居ない俺でも怖いから、当人達の恐怖は凄まじいだろう。
そんな中を回ると感謝の言葉を掛けられるが、それだけじゃ無かった。
安否確認や他の地域の事などを教えてくれと言われる。
俺たちに分かる訳無いのに。
避難所の体育館裏に回った時だった。
ぐぅーぐくぅー
曇った声が微かに聞こえた。
『ん?なんか聞こえませんか?』
「黙れ!」
はぁ?なんだよ。その言い方。
2人はソーっと声が聞こえた方に歩いて行った。
行ったと思ったら急に草むらに入って行って、バチバチバキバキ音が聞こえ出した。
え?なにごと?
と、思ってたら血だらけの男が転がってきた。
入って行った1人が馬乗りになりバチバチ殴ってる。
状況が全くわからない。
もう1人が女の子を連れて出て来た。
さっきの高校生くらいの女の子だ。
俺の顔を見て抱きついてきた。
「知ってる子か?」
『さっき知り合って少し話をした程度ですが、知ってる娘です。」
「こいつがその子を犯そうとしてやがった。」
『マジっすか』
「処理はしとくからお前はその子を車に連れて行け。」
『はい。分かりました。さ、こっちに行こう。』
無言で付いてくる。
処理って警察に突き出すのかな?
この状況じゃ警察は機能してないけど。
車に戻ってオヤジさんに説明した。
「こう言う事は良くある。だからオレたちの巡回が必要だし、生理用品も周りに分からないように渡さなきゃならん。生理だと分かると襲われる事が何故か多いんだよ。」
『すごく勉強になりました。色々考えられてるんですね。』
「経験値の違いだ。今日はその子をトラックの荷台の空いてるところに連れてってやれ。そこなら暖も取れるだろ。」
『はい。こっちだよ、行こう。』
トラックの荷台に毛布が何枚も置かれていた。
トラックは箱車なので風は凌げるが寒い。
密閉空間じゃ炭も使えないから、毛布を掛けて上げた。
なんて声掛けよう。
「なんで私ばっかり」
『うん。辛いよね。』
「私もお母さんと一緒に死にたかった」
『そんな事言わないでよ。せっかくキミと知り合えたんだから』
「辛い事ばっかりだし、怖い事ばっかり」
『そうだね』
「もう耐えられない。いい事も無いし死にたい」
『俺も辛い事多いけど、キミと知り合えた事は幸せだよ。』
「明日には居なくなっちゃうのに、優しい言葉ばっかり。責任も取れないくせに!生きてても意味ないよ」
『そんな事無い。生きてればいい事だってある
・・・・ゴメン・・・・そんなのウソだ。』
「え?」
『生きてればいい事有るなんてウソだ。実際は辛い事の方が多い。って言うか辛い事ばっかりだ。もっと辛い事も多い。でもね、生きてればもっと辛い事が起きた時、今日の事はそんなに辛く感じなくなるよ。』
「もっと辛い事が起きる事を期待してこの先生きろって言うの?」
『そう。今日の事を笑い飛ばせるくらい辛い事が待ち受けてるよ。』
「そんなのイヤ。」
『だよね。だけどね、その中にも小さな幸せは有るんだよ。その辛さの中にある小さな幸せは、他の人では感じる事が出来ないその幸せは大きな幸せなんだよ。今日、ここでキミに会えた小さな幸せは掛け替えの無い俺の大きな幸せなんだよ。』
「・・・・・・早く来ないかな・・・・・・今日を笑えるくらい辛い事・・・・・・」
『大丈夫。キミなら大丈夫。どんな事でも乗り越えられる。大丈夫だよ。』
「泣いても良いですか?」
『うん。明日の為に今日はいっぱい泣きな。明日になれば大丈夫だから。」
昔読んだ本が役に立った。
似たような場面があった。
因みに
この娘を犯そうとした奴は震災犠牲者となった。
ヤクザってこえーw
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