七四さん
いつもコメントありがとうございます。
もう少し続きますが、物語は佳境に入って行きます。
楽しんで頂けたら幸いです。
《38》
静香と別れたが、お互い仕事は割り切って行っていた。
少しだけ、顔を見るのも辛い時期が有ったが、乗り越えた。
その後、1年ほど過ぎた年末のクリスマスイベントを最後に、静香が結婚する事になり退店する事となった。
相手はもちろん龍二だ。
静香29歳
俺たちは24歳だった。
その頃になると流石に吹っ切れていて、普通に祝福出来た。
俺は相変わらずだったがw
次のリーダーは千尋で決まっていた。
オープンからいる事と、毎日出勤している事、年齢的な事もそうだった。
龍二達は仕事の関係で新居は大阪になった。
移動すると言う事もあり、結婚を申し込んだらしい。
大阪と聞くと愛美を思い出すが、こっちも胸が痛くなる事は無くなっていた。
多少気分が重くなるくらい。
年が明けて新年のオープンを迎え、千尋がリーダーとして頑張ってる。
龍二と静香も無事に引っ越しが終わったと連絡があった。
正月気分が完全に無くなった1月17日
朝方地震が有った。
少々揺れた程度だったので、すぐに眠りにつこうとしたが、寝付けずテレビを付けた。
『震度いくつだったんだ?』
軽い気持ちだった。
後に阪神淡路大震災と名付けられる大地震だった。
真っ先に頭に浮かんだ。
愛美は大丈夫か?
龍二は?静香は?ツトムさんや真琴ちゃんは?タケシ、マサキは?会社のみんなは?
すっ飛んで行きたいが当然交通規制が掛かって行けない。
だんだんと被害状況が明らかになって来る。
凄まじい被害だ。
どうしようもなく、アパートに篭っていたら電話が鳴った。
『もしもし』
「わしや」
オヤジさんだった。
「神戸の地震は知ってるな」
『はい』
「組でこれから炊き出しに行く。連れてってやるからお前も手伝え。心配するヤツもいるだろ?」
『ありがとうございます。すぐに行きます。』
「食材の調達は若いモンが走ってるから、お前は薬屋行って、オムツとミルクと使い捨てカイロと生理用品をありったけ買って来い。」
『分かりました。』
「一件や二件じゃ無いぞ、田舎市のオムツを買い占めて来い。」
『すぐ行きます。』
なるほど、生理用品か
そりゃ困るよな。
車を持ってない俺は、貴紀に連絡を取って、一緒に回ってもらった。
事務所と薬局を何度も往復して、買えるだけ買ってきた。
店は臨時休業にした。
開店してもしばらく休む事をママさんに伝えた。
4トン車3台とワゴン車3台に詰め込むだけ詰め込んだ人員と物資を持って、神戸に向かった。
この時まだ13時だった。
「こう言う時は行政よりオレたちヤクザ者の方が早く動ける。行政は助けた後の事はまだ考えられないからな」
確かにそうだった。
助けた後の水や食料の確保など後回しだ。
まずは助ける事が最優先。
それは間違ってないが、困っている人は確かに存在する。
「治安維持もオレたちの仕事だからな。」
この時は意味が分からなかった。
治安維持って悪くなるの?
みんな被災者なんだから手を取り合ってって感じじゃ無いの?
高速は途中までしか使えなかったから時間が掛かった。
街並みがドンドン酷くなって行く。
途中、検問が何か所も有って一般人が入れないようになってるが、ヤクザだと分かると通してくれる。
警察も普段はヤクザを目の敵にする癖に、こう言う時だけ利用する。
それでも神戸市内には行けなかった。
道路が通れる状態じゃ無い事と救出活動がまだ時間との勝負だったからだ。
道に散乱している瓦礫を自分達で退かしたり、助けを求める人を車に乗せて、なんとか大阪市内の避難所に付いた
直ぐに炊き出しを始めた。
避難所には救援物資が届いて居なく、みんなに感謝された。
俺は料理が全く出来ないので、カイロを渡したり母親にミルクとオムツを渡していた。
オヤジさんに生理用品は渡すなと言われていた。
「他の理由も有るが、恥ずかしいだろ?w」
なるほど。
感心する事にばかりだ。
ヤクザなのに優しいな。
炊き出しが終わり、一通り食事を渡し終わったので、片付けを手伝っていた。
「こっちの片付けは良いから、女に生理用品が必要か聞いて回って来い。周りにバレないようにな。必要ならアッチのトラックに来るように伝えて来い。」
『はい。』
避難所の生理がありそうな年齢の女性に声を掛けた。
やっぱり数人の女性が欲しいと言ったのでトラックに行くように伝えて回った。
今日はここに泊まって、明日移動するとの事。
やっと終わったので、ワゴンの中で座って寝てた。
巡回の時間があったので、起きてトイレに行った。
トイレでさっき生理用品を渡した女の子に会った。高校生くらいかな?
「さっきはありがとうございました。」
『いえいえ。怪我とか大丈夫?』
「それは大丈夫なんだけど・・・お父さんとお母さんがダメだった。」
泣き出してしまった。
そりゃそうだよな。
抱き締めて頭を撫でて上げてた。
掛ける言葉なんか無かった。
10数分泣き続けて、少し落ち着いたのか
「ごめんなさい。初対面の人に」
『大丈夫だよ。こんな胸で良かったらいつでも貸すから。』
「ありがとうございました。」
『うん。いつか笑える日が来るから、頑張ってね』
「ありがとう。ヤクザ屋さんって優しいんですね。」
『俺は違うw知り合いが大阪に居るから、心配で付いてきただけw』
「そうなんですか?w」
『うん。良い笑顔だwゆっくりおやすみ。』
「はい。おやすみなさい。」
かわいい子だったなw
状況は最悪なのにあの娘はなんか落ち着く。
※元投稿はこちら >>