昼休み、里帆さんから電話があった
「こんにちは、お仕事お疲れ様です」才女と評判が高いだけに、電話の声もとても丁寧だ
「そんなことないですよ、美雪さんがいつもサポートしてくれますし」
「それなら大丈夫かな。週末いろいろあったみたいね。主人から詳しく聞いちゃいました。ふふ」
「ああ、その、聞いちゃったんですね」
「ええ、今も身体が少し熱くて…、ごめんなさい、午後からもお仕事なのに」
「いえ、いろいろあったので、今日は落ち着いています。美雪さんに挑発されなければですけど」
「そうね、でも彼女大事な時期だから、あまり挑発しないわよ」その時鼻腔に素敵な香りが届いた。美雪さんが近くに来ていた
「そうだ、明後日の件なんですけど」
「そうね、住所メールします。それじゃ午後も頑張って、大好きな、あなた」電話を切っても俺はしばらくニヤニヤしていた
「ちょっと~、何、その顔」俺の頬を美雪さんがつねった。
「いや、その、里帆さん優しいなって…、あ、メール」メールに明後日の集合場所の住所があった
「ついに、魔性の女のお城にお呼ばれってわけね」美雪さんが俺のメールを覗き込んで言った
「ここ、美保さんの自宅なんですか?」
「ええ、あそこには松田家のアーカイブがあるの」
「アーカイブ?」
「そう、いわば家族の過去の記録がすべて保管されているわ、小さい頃の子供たちのアルバムや、学校の成績、そして、夜の記録」
「でも見せてもらうわけじゃないし」
「そのうち見せられるわよ、彼女、気にった人しか自宅に招待しないの。ノンは今彼女の一番のお気に入りだからね」美雪さんの視線にはいささか棘があった
「家の旦那、いまだに姉にぞっこんなのよ」
「えっ?社長が?」
「そう、高校生の頃、姉が家庭教師として旦那を指導してくれて、成績がグンと上がったみたい。その時のアメと鞭がいまだに忘れらえないみたい。わたしと結婚した後に、姉がその時の家庭教師だと知って、しばらく姉にのめり込んでたの」
「美雪さんがいるのに?」
「そうよ、だからわたしは姉を絶対許さないの」
「そうだったんですか…」
「で、里帆さんに何て言われてニコニコしてたの」
「いや、その、あの、大好きなあなた、なんて」俺は思い出しさらにニヤニヤしながら言った
「わたしも大好きよ、パパ」美雪さんの言葉に俺はハっとなり周りの様子をうかがった。数メートル先を由実さんと麻衣さんが歩いていた。
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