三角巾を頭に被り、秀之と色違いの薄紫色の仕事着を着た裕美子が、カツ丼より先に漬け物と味噌汁を運んできた
他の客 おそらくは地元の農家か漁協の連中だろう、若者から初老のオヤジまで、揃いも揃ってうどんを啜っていた 見るでもなく連中を視界に入れていると、奇妙なことに気付いた
皆、一様に視線が裕美子を捕らえている 配膳の際も、注文を取り厨房へ戻る時も、うどんを啜りながらチラチラと、だがねっとりとした視線を浴びせ続けていた
作務衣風の麻で出来た仕事着 前屈みでテーブルを拭いたりしていると、豊かな尻の丸みがくっきりと見えた 勿論、下着のラインまで丸分かりだ
「カツ丼お待ち」
秀之が厨房から客席に自らカツ丼を運んできた
秀之の姿を見て、連中は慌てて視線を裕美子から逸らした
「半年ぶりだけど上手く出来たんだ、お代は要らないからゆっくり食べな」
秀之が満面の笑みで厨房へ戻って行く まずは味噌汁に口を付け、漬け物を噛じる
(この胡瓜の糠漬け、旨いな)
恐る恐る、カツ丼を持ち上げ、一切れのカツを頬張る
(醤油の味しかしない!)
連中がうどんしか食べていない意味を即座に理解した
「旨いか?」
「はい、御飯がよく進みます」
この食堂は、裕美子の尻が支えている様なものなのだろう ピッチャーから何度も水を注ぎ足し、気付けばピッチャーは空になっていた
昼時だというのに、客は先程の連中以外には入って来なかった 手持ちぶさたになった秀之が再び現れる
「今朝のお礼と言っちゃなんだが、少し先に養鱒場が有る 併設の釣り堀で時間潰して来な」
手に何かの券を握らされた
「この季節なら夕方には服も乾くから」
先程、自分が浴室で自慰をしている間に、裕美子はずぶ濡れの服を洗濯してくれていた
「帰って来たら作業場に来てくれ」
秀之はそう言って厨房に戻って行った 外に出て、駐車場に止めている車に乗り込む 裕美子が運転席の窓をコンコン、と叩いてきた
「気を付けていってらっしゃい、後…」
「後?」
「若いから仕方無いけど、あんまりお風呂でおイタしてはダメよ びっくりしちゃった」
裕美子はそう言って顔を赤らめながら微笑んだ
「はい、はいはいはいっ、い、行ってきますっ」
バレていた 猛烈な速度でシフトをバックに入れ、スキール音を鳴らしながら駐車場を飛び出した
(なんだよ、もう)
顔面がカアッと熱くなる 車の窓という窓を全開にしてもまだ、火照りは収まらなかった
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