「先にご飯食べててね?」
秀之を呼びに、裕美子は作業場へと消えて行った
店の残り物の煮物や焼鳥が卓袱台に並んでいる
何かの切り屑まみれになった秀之が現れた
「なんだ、タカ、気にしないで先に食ってろよ」
秀之はどかりと腰を下ろすと、飯の上に焼鳥を乗せて串を外し始めた その上から熱い茶をかけ回す
「焼鳥茶漬けだ、旨いぞ」
ズルズルと茶漬けを平らげ、秀之はあっという間に作業場へと消えて行った 茶の間から出る直前、自分にこう告げていた
「今夜も 頼む、な」
入れ違いで裕美子が風呂から上がってきていた
「タカちゃん、今日一日お疲れ様」
片手にはビールグラスが握られている 裕美子は手酌でビールを注ぐと、グイッと一気に飲み干した
「あー、美味しっ」
ふんわりとした、愛らしい顔が綻んでいる
「タカちゃんも、どうぞ?」
「じゃ、お言葉に甘えて」
裕美子のペースは早く、小一時間程で既にビール瓶が三本、空になっていた コロコロとよく笑い、桜色に染まった首元や頬が艶やかだった
「それでね、今朝 俺のドブロクが無いって主人に叱られちゃってね、…」
裕美子と話している時間は楽しかった やがて夜も更け、卓袱台を片付けた裕美子が小さく囁いた
「今夜も お願い…」
奥の間には、昨夜と同じく 布団が仲良く敷いて有った
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