「裕美子ちゃん、終わったよっ」
店の裏手から、出入りの酒屋だろう、紺地に地酒の銘を白抜きした帆前掛けを巻いた四十半ばのオヤジが厨房に入ってきた
「ビール三ケース、樽が二つ、冷酒が……締めてこれだけ」
「いつも御苦労様、康夫さん」
伝票にサインしながら裕美子が労うと、康夫は下卑た笑みを浮かべながら、裕美子に話しかけた
「裕美子ちゃん、いつも綺麗だけど今日は一段と艶が有るねぇ…昨晩はヒデちゃんとお楽しみかい?ヒヒヒっ」
そう言い終えると、裏手に戻る為にすれ違う瞬間、裕美子の尻をむず、と掴んだ
「嫌だもう、康夫さんっ」
「じゃ、毎度っ」
康夫はニトンロングのトラックに乗り込み、麓に戻って行った
「もう、いつもこうなんだから…」
裕美子が憤慨していると、秀之がニヤニヤしながら口を開いた
「実際、今日はいつもより艶が有るな」
「もう、早く着替えて来てっ」
可愛い人だな…そう思いながら裕美子を見ていると、頭に拳骨が落ちてきた
「タカ、お前のせいで叱られたぞ」
どんな顔をして良いか分からず、とりあえず謝った
「すみません…」
「タカちゃんに当たらないで、早く着替えて手伝ってっ」
唇を尖らせながら、秀之は古民家に戻って行った
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