「あらあら、タカちゃん大丈夫?」
裕美子が立ち上がり、布巾で一枚板の卓袱台を拭き、自分の顔をタオルで優しく撫で付ける
秀之はそれに構わず話を続けた
「タカ、俺はな 不能なんだよ… 片肺潰れる程の怪我をした時に、あちこち神経もやられててなあ」
「裕美子はそれも承知の上で、一緒になってくれたんだ」
布巾とタオルを片付けて、茶の間に戻ってきた裕美子は、対面で胡座をかく秀之の隣に座った 先程までのような笑みは消え失せ、切なくすがるような眼差しを自分に向けている
「子供が、欲しいの…」
裕美子が消え入りそうな声を絞り出した
「この辺りみたいな田舎じゃな、タカ… 三十路手前にもなって子供も産めない女ってのは色々妙な噂を立てられるんだ」
「だからって、そんな…」
「昔、私が襲われたことを知っている人達は、その時に傷物にされたからだ、なんて根も葉もないことを言うのよ…」
裕美子が目を伏せた 太股の上で固く握りしめた両拳に、一滴 二滴と涙が零れ落ちる
「タカちゃん、私ね、異常なの…月のものが来る前は堪らなくなるの…あの襲われた場所で、滅茶苦茶にされたくなって堪らなくなるの…」
思春期の不安定な精神状態での恐怖が、性的興奮とごちゃ混ぜに繋がってしまったのだろう
「じゃ、今朝のことは…」
「そうだよ、全て裕美子の為にしていたことだよ…不能の俺には、あんなものを作ることくらいしか出来ないしな」
無理矢理歪められた性癖と、それに応え続ける 愛情 二人はそれでも良かった だが、田舎の堅苦しく古い風潮は、二人に 人並み、普通、を理不尽に要求している
「こんな異常な女、タカちゃん、嫌い?」
裕美子は立ち上がり、浴衣の帯を解いた
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