スッ と、奥の間に続く襖が開いた
「絵美子、タカちゃんが困ってるわよ?いい加減になさい…」
「ママ…!」
しっかりとした口調で 裕美子が絵美子を咎めた まるで憑き物が落ちた様に、しゃんとしている…
「タカちゃん、ごめんなさいね…いつも私達が迷惑ばかりかけて…主人に夢の中で叱られちゃった…」
裕美子は仏壇をチラと見やり、再び振り向いた
昼間と違い、ちゃんと視界に仏壇が映っているようだ… きちんと、秀之の死と向かい合えた証だった
「裕美子さん…あの…すみません…」
「良いの…あの時、確かに主人に抱かれたの、私……私、幸せよ…」
絵美子がパジャマの袖口で涙と鼻水を拭っている
「あらあら、絵美子 汚いわね…」
裕美子が優しく、絵美子の顔をティッシュで拭いてやると、絵美子が裕美子に問いかけた
「ママ、ママはタカと結婚したくないの?」
「ママはね、パパの事が大好きなのよ…タカちゃんも好きだけど、その好きとは違うの…ね?分かる?」
(…昔から、分かってたけど…改めて言われると、ちょっと、なあ)
多少 傷付きながらも、努めて平静を装った…
「じゃ、送って行きます」
絵美子を三菱の四駆に乗せ、中学校まで送って行く最中、絵美子は不機嫌だった
「ママが元気になって嬉しいけど、なんかフクザツ…」
「そんなことを言うなよ…パパとママの間には、自分なんか入る隙間なんか無いんだよ」
「オチンチンは入れたのに?」
何も口に含んで無くて良かった…
「じゃ、タカがリコンしたら、アタシがタカのお嫁さんね!」
丁度、校門に着いた瞬間、絵美子が言い放つと同時に 自分の頬にキスをし、助手席から飛び出して行った…
(まだ新婚なんだけどなあ…)
ハザードランプがチカチカと音を立てる車内で、独り 呟いた…
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