先程、父娘という禁忌を破って交わったことが嘘の様に 絵美子があどけない笑みを浮かべながら丼を平らげていた
「やっぱり焼鳥茶漬け、最高っ」
「もっといいもの頼んでも良いんだぞ?」
「ううん、これが良かったの だって、パパとタカの味だから」
人間の記憶で 一番深く残るのは匂い、そして食物だと、何かで読んだことが有る…絵美子にとっては これが一番の御馳走なのだろう…そう考えながら、自分も焼鳥茶漬けをズルズルと平らげた
「絵美…絵美?」
マキが自転車で様子を見に来たようだ…高校生の姉の影響なのか、ギャル系のブランドロゴが入ったスウェット上下、中学生なのに化粧まで施していた
「マキ!」
食堂の前で和気藹々と話す姿は、すっかり以前の絵美子に戻っていた…
食堂の入り口に立ち、食後の麦茶を飲みながら二人を眺める
しばらくすると、なにやらコソコソと此方をチラチラ見ながら話をしている マキがニヤニヤしながら此方に向かって来た
「タカさん、今度は私にも、色々悪戯してね?」
口に含んだ麦茶を 危うくマキに噴く所だった
無理に我慢したせいで鼻から麦茶が溢れる
「やだ、タカ 汚ーい」
絵美子が笑っていた マキはいつの間にか涙ぐんでいた
「ごめん、マキちゃん、かかっちゃった?」
「違うの…絵美が元気になって本当に良かった…タカさん、有り難う」
父娘で関係を持ってしまった事で 礼を言われるとは… 世間的には決して許されることでは無いが、それで絵美子を救えたのなら、それで良いのかも知れない…
「マキ、部屋に行こう?」
「うん、今行くね」
絵美子はさっと身を翻し、部屋に戻って行った マキが去り際、自分の耳元で囁く…
「絵美とのこと、誰にも言わないから安心して…だから、今度は本当に私にも、大人のエッチ教えてね?」
「ばっ、ま、マキちゃん?」
「絵美、待ってってば」
マキが去って行った 食堂に戻り、師匠の真似をして覚えた手巻きタバコに火を点ける
「千代子さんなら、やっぱり抱けって言うのかなあ…」
ふう、と紫煙を吐きながら、独り 呟いた
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