(あ、しまった…)
あの後、裕美子が食堂に戻って来て、秀之を交えて話し合った所までは覚えている…内容は全く覚えていないが…
慣れない一気飲みなど するものでは無いな、と思いながら起き上がると、小上がりに敷かれた布団の上だった
時計を見ると、既に朝の七時を過ぎていた 食堂から出て駐車場を見ると、秀之の軽トラが消えていた 古民家にも、人気が無い…
「おはようございまーす…」
勝手口から入るが、やはり秀之と裕美子の姿は無い 卓袱台に、一通の封筒が置かれていた 中の便箋を取り出してみる…
(二人で温泉に行ってきます……帰りは夜遅くなります…?)
続けて、こう書かれていた
(タカちゃんに絵美子をお任せします……二人で覚悟を決めました……絵美子を宜しくお願いします………!?)
その時、絵美子の部屋の戸が開く音がした…
「ママ、お腹すい…? きゃっ!」
「お、おはようございます…」
赤錆色の湯が人気の 日帰り温泉に向かう軽トラの車中で、裕美子が秀之に問いかける
「絵美子の為とはいえ これで良かったのかしら…」
「正解なんて 誰にも分からないさ…タカと何か有っても無くても、絵美子は二人の大事な娘だし、タカは俺達の恩人だよ…」
「そうね、タカちゃんには、昔から迷惑かけっ放しね…」
裕美子が、秀之に聞こえないくらいの小声で、そっと呟いた…
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